清涼感のある歌声でコーヒーブレイクを
スザンヌ・ヴェガのフジロックへの出演が発表されたとき、「え?あのスザンヌ・ヴェガだよね?」と驚いた。スザンヌ・ヴェガは、1990年代に「Tom’s Diner」がコーヒーのCMに使われたことで、所謂「洋楽ファン」という枠を超えて一般的な知名度を得た女性シンガーである。近年、自身の楽曲をアコースティックな小編成で再録音する“クローズ・アップ”シリーズを展開したり、来日公演を行なっていたりと、精力的には活動をしていたものの、夏フェスというイメージはなかったので、驚いたのだった。もちろん、今回が初の日本の夏フェス出演となる。出演は夕暮れ時のフィールド・オブ・ヘブンだ。
デビューアルバム『Suzanne Vega』収録の「Marlena on the Wall」からライブは始まった。スザンヌは黒いジャケットに黒いシルクハットというスタイリッシュな格好。よくよく見ると、中に着たTシャツには「KONI-CHIWA」と書かれている。あの清涼感のある歌声が未だ健在なことにまず驚かされた。演奏はスザンヌが弾くアコースティック・ギターと、サポートの技巧的なエレクトリック・ギターといういたってシンプルな編成で、時折サンプリングの音は加えるものの、基本的には音数を絞ったアレンジとなっていた。
2曲目に演奏されたのは、彼女の代表曲である「Luka」。 「私の名前はルカ 二階に住んでるの」と歌うこの曲は、アコースティックギターをバックに穏やかな進むメロディーの曲だが、よくよく歌詞を聴くと幼児虐待の子どもの視点から歌われている。リリース当時から話題となったが、現代社会にも未だ通じるという悲しい事実をつきつけられるようだった。ライブ中盤では、数年前に自ら命を絶ってしまったSPARKLEHORSEのマーク・リンカスにと、「The Man Who Played God」が捧げられた。敢えて感情を抑制したような彼女の歌声には、雨が降るフィールド・オブ・ヘブンの風景がよく似合う。
ステージの最後を飾ったのは、前述のCMソングとしてもお馴染み、「Tom’s Diner」。アカペラバージョンではなく、サポートのギターが効果音的なギターを加えるアレンジとなっていた。最近、この曲をモチーフにした(と思われる)某アイドルの楽曲にはまっていたのだが、やはり本家本元が一番だ。歌いあげると、軽やかにシルクハットを掲げて挨拶し、軽やかに去っていった。洒落た喫茶店でのコーヒーブレイクタイムのように、スタイリッシュなライブだった。
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