プロデューサーとしてのダニエル・ラノワは大ヒット作も、評価の高い作品もあり、明らかに大物といえる。雨が止んで、山特有のひんやりとした空気と共に霧が降りてきているフィールドオブヘブンは、彼の残した作品群の知名度と比べるとさみしいものだった。この後に出てくるガース・ハドソンとセットで楽しみにしている人もいるだろう。ヘブンには通な人たちが構えている感じだ。
ダニエルの他、メンバーはドラムとベースの合計3人だけで、楽器はステージ下手からドラムセット、ギター、ベースとあまり離れずに置かれている。そして上手にはダニエルが弾くスティールギターがある。
3人が登場して、ダニエルはまずスティールギターの前に座り、ジャムセッションぽくライヴを始める。そして、ダニエルは席を離れギターをレスポールに持ち替えて「ザ・メイカー」。CDではゆったりした曲だけど、引き締めたロックよりのアレンジになっていた。
シンプルな編成だし、トリッキーなプレイをみせるわけでもなく、地に足がついたどっしりと落ち着いた渋いロックを聴かせてくれる。そのうえで、3人しかいないという物足りなさなど全くなく、プロデューサーとして全体の音響を考えつつ、シンプルな編成でできることを追求している感じなのだ。
途中は再びスティールギターが演奏され、ゆったりとした世界を作り出す場面もあった。「スティル・ウォーター」やU2のボノと作った「フォーリング・アット・ユア・フィート」なども演奏され、CDよりも生き生きとした印象の「シャイン」など、お客さんも熱狂とか手拍子とか合唱とか無縁でじっと聴き入っていた。でも、それがダニエル・ラノワの音楽の楽しみ方なのだ。木々に囲まれ霧に包まれた場所で聴く、「ザ・メイカー」や「スティル・ウォーター」が東京の高級ライヴスポットで聴くのと違った体験になっていたのだ。あ、フィールドオブヘブンだから自分で持ってくれば椅子に座って食事もお酒も楽しめるけど。これ贅沢なことだろう。最後はダニエルが延々と激しくギターをかきむしることもあり、最後にゆったりだけでない印象を加えていったのであった。
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