絶大なる存在感
遠くからビョークと思われる声がかすかに聞こえてくる。グリーン・ステージには相当な数のフジロッカーを総ざらえしていることは容易に想像ができた。ビョークとは毛色のまったく異なるとは言え、ホワイトステージにはどれだけの人がいるのだろうか? 正直そんな心配をしいていた私だった。確かにこの時間帯としては多くはないスタートだったけれども、カラフルなネオンライトを手に巻いた人たちや、柵前を陣取って今や遅しと待ちわびる人が集まって来ていた。
映画のオープニングの効果音として使われているような電子音が鳴り響くと、それまでの静寂を打ち破る爆音がスピーカーから放たれてきた。ステージ両脇にはシンセサイザーの2人が陣取り、ベースにドラム、DJを引き連れてステージに出てきたのは、小柄な若きラッパーのKENDRICK LAMARだった。もう雨は降っていないけれど、半透明のレインコートを羽織り、爆音とともに幕が下ろされた。ホワイトステージってこんなに爆音が出たっけ?思うほどに、分厚く迫ってくるベース音は、着ている服をも振動させ、新種の獣がいたら、こんな絶叫をするんじゃないかと想像を巡らさせられた。
華奢な風貌とは裏腹に、KENDRICK LAMARステージを縦横無尽に闊歩する姿は、ただならぬ存在感の塊。手をかざせば、オーディエンスも手をかざし、「左側、いいか?」、「じゃあ、右側、いいか?」、「じゃあ、正面、いいか?」とライブにオーディエンスへレスポンスを求めた。その光景はKENDRICK LAMARが自分のライヴをオーディエンスに見せているというよりは、KENDRICK LAMARのライヴを作り上げる一員として、オーディエンスを巻き込んでいるようでもあった。
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