アバロンの夜を心地良く揺らすほっこりサウンド
ステージに出てくるなり、「MCの人、よく喋るね。もっと喋って欲しかった…………あっ!何も言わずに始めるつもりだったのに喋っちゃった!」と小野一穂(ボーカル&ギター)が天然っぷりを発揮するなど、ジプシー・アバロンできわわは、終始ゆるくほっこりとした、だけども最後には観客の胸をガッチリ掴んで帰ってしまうパフォーマンスをみせてくれた。
「じゃあ、(グリーン・ステージでライブ中の)ビョークとセッションはじめるか!」とスタートしたライブは、6月にリリースしたばかりの1stアルバム『きわわのわいきき』1曲目のナンバー“12月の夜”。小野のポエトリー・リーディングと、宮下広輔(ボーカル&スティール・ギター)が奏でるスティール・ギターの浮遊感のある響き、そしてgnkosai(ボーカル&ドラム)のリズムが加わって、きわわ独特の詩的な世界観が立ち上がる。続く“手紙”では小野がアコースティックギターを弾きながら観客を覗き込んで笑わせる。なんともヘンテコな3人組だが、夜のアバロンの空気感にものすごくマッチしている。gnkosaiも「ちょうどいい。マジちょうどいい」を連発し、きわわとアバロンとの絶妙な相性の良さを賞賛する。
けして強い自己主張をするわけではない。すべてを語り過ぎない、余白の多い音楽。だからこそ聴き手は思い思いの方法で彼らの音楽と接することができるのだ。アバロンでは大きく体を揺らしたり、フィールドに座ってステージを見たり、それぞれの楽しみ方をしている。「フジロックにお客さんとして来た時も、いつもここに滞在してます」(小野)というジプシー・アバロンは、ひょっとすると彼らのホームとも言える場所なのかもしれない。
隣のホワイトステージから漏れ聞こえてくるKENDRICK LAMARの派手なサウンドを聞きながら「ここから先、音の小さいきわわも頑張ります」(小野)と3ピースが激しく交錯する“段々畑”を披露。観客も一緒になって歌い、アバロンに温かな一体感がもたらされる。最後に「すげえ楽しかったから、時間が早かったです。最後に45分ある曲やりますよ」(小野)と“きわわのテーマ”を歌うと、観客も一緒になって大合唱。彼ららしいほっこりとしたサウンドが、心に温かい余韻を残すステージだった。
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