復活
この時をどれだけ心待ちにしたことか。2007年、カット・ケミスト脱退による突如の活動停止を知らされてから6年。この6年の間、DJヌ・マークやMCチャリ・ツナのソロでのフジロック参戦など、さまざまな形でジュラシック5の片鱗を見ることができていた。その片鱗を見るたびに、ジュラシック5をフジロックで見たい。そんな期待を抱いてしまっていたのではないか。突如今年4月、コーチェラ・フェスティバルにジュラシック5が発表された。カット・ケミストも戻り、完全復活したのだ。そしてフジロックにも初参戦が決定。二日目ホワイトステージのトリ。この時をどれだけ心待ちにしたことか!
開始10分前、ビョークの観客がホワイトを目指して歩いているだろう時間帯。だがすでにホワイトステージは満員。ステージ上、上手にはレコードの上に手が添えられているようなマークがついたもの、下手には三角フラスコとハサミのマーク。カット・ケミストが復活している!わかってはいたけど、百聞は一見にしかず、実際に目の当たりにすると興奮する。それは僕だけではなかったようで、常に観客がそわそわしている様子が見てとれた。22:30に近づくにつれ、どんどんグリーンステージ方面から人がなだれ込んでくる。このホワイトステージがダンスホールと化するまでは時間の問題だった。
オンタイム、ステージが暗転すると一斉に騒ぎ出す観客。SEがかかりついにメンバー登場した。4MCによる熟練された言葉選び、そして世界が認めるターンテープリスト二人によるアンサンブルは、6年間活動休止していたとは思えないほど息が合っていて、MCの掛け合いなどは圧巻。各個人のMCのレベルも高いし、サンプリングセンスも抜群なので、終始踊らされることとなった。そもそもエンターテインメント性の高いライブなのに、中盤MCで、「YO!TOKYO!!」と声高に叫ぶと、すぐにメンバーから「No No JAPAN!」と訂正が入るなど、楽しいアクシデントもあり、観客はもちろんメンバーも終始笑顔だったことが印象的だ。
また、記憶に新しい2008年フジロック。チャリ・ツナがギャラクティックのライブに参加した時、ジュラシック5の曲をやっていた。そして今日、その時披露した2曲を生で、そして本物のジュラシック5による演奏で聞くことができたのだ。4MCの中でも独特で、腹の底に響き渡るチャリ・ツナのMC。うーむ。なんて感慨深いのだろう。
さて、2DJはというと、ライブ中盤には二人のDJバトルがあった。スクラッチバトルが終わったかと思うと、二人とも飛び道具を用意していたようで、カット・ケミストはマンドリンのような形のターンテーブルをそれこそ、ギターを持つようにして、スクラッチ。回転数を操作して、ディープ・パープルの”Smoke On The Water”を演奏するなどして観客を楽しませる。一方ヌ・マークは、大小さまざまなレコードを”ちんどんや”のように叩いてサンプリングするという視覚的に面白いものを見せてくれた。二人の様子の対比がとても面白く、演奏中楽しそうに体を揺らして表現するヌ・マークに対して、カット・ケミストはほぼ動かないで冷静に演奏している印象(それにしても手先はすさまじく動いているわけだが)。そんなカット・ケミストがちょっとふざけたりすると、それがまた楽しい気分にさせてくれるのだ。後半になだれ込み、本編最後には、再度2DJがフロントに出てきて、6人揃ってダンスをしながら終わっていった。
本編が終わっても観客の拍手は止まない。予定調和ではなく、その拍手に応えるようにメンバーが再度登場。この頃には、もうホワイトステージは超満員で、その全員が手を挙げたり、振ったりする光景は圧巻だった。正直僕はヒップホップを知らない。ここまでだらだら書いてしまって言うことではないが、こんな僕でも最後まで踊らされたわけだから、知っている人なんかはこんなもんじゃ済まなかったことだろう。しかし、このエンターテインメント性はヒップホップだろうが、ロックだろうがジャンルなんて関係ないと思う。ジュラシック5がかっこよければそれでいいじゃない。
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