ハスキーな声と柔らかなギター、あたたかなブルース
かのウィルコ・ジョンソンが絶賛していると聞いてはいるが、とにかく情報が少ないアーティスト、ベンジャミン・テホヴァル。味のあるブルースを聴かせくれるとのことで,期待を胸に木道亭へ向かった。
既にお客さんが4-50人は待機している中、暖かい拍手で迎えられた初老の小柄な紳士は1曲目に44 Bluesを披露。ハスキーな声と柔らかなギターにブルースハープを駆使しながらキックとベースを足下で操作し、たった一人で世界を作り上げて行く。
客席とベンジャミンが一体感を得始めたところで、突然のアクシデント。ギターアンプからのノイズが止まらなくなり、演奏を中断せざるを得なくなったのだ。裏方が慌ただしくシールドを交換し、それでも解決せずギターアンプ自体も取り替える。
その中に妙に親身に動いている体の大きなスタッフがいるなあと思っていたら、なんとウィルコ・ジョンソンその人であった。ギターアンプを丁寧に調整し、「さあどうぞ」との微笑みでステージを後にしたウィルコに客席から拍手が起こっていた。
「たまたま通りかかったらすごくいい演奏をやっていて、つい聞いてしまった」とは、よくある、しかし得難いフジロックの奇跡なのだが、それはまさにこの瞬間なのだろう。木道亭のお客さんはどんどん増えて行き、最終的には通路を塞ぐ程に膨れ上がった。
最後はボブ・ディランの”Like a Rolling Stone”で締めくくられ、投げキッスとともにベンジャミンは去って行った。
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