若いバンドに恵みの雨
ニューヨークからきた若手のバンドDIIV(ダイヴと読む)が始まる前はレッドマーキーのPAブースから前ぐらいしか人が埋まっていなかった。定刻を3分くらい過ぎてバンドがあらわれる。90年代のギターロックが好きそうな雰囲気そのまんまのルックスで、ギター2本とベース、ドラムスの4人がメンバー。ステージ下手にギター&キーボードのサポートメンバーと思われる人が参加している。
選曲は新曲をいくつかとアルバム『Oshin』から。引き合いに出されるように、ソニック・ユースとかニルヴァーナとかマイ・ブラッディ・ヴァレンタインとかのギターサウンドをこよなく愛している感じのバンド・サウンドである。どこかで聴いたことあるようなギターの音だし、リード・ヴォーカルのザカリー・コール・スミスのヴォーカルスタイルもメロディも新しい要素はあまり感じられないけれども、非常に際立っているのは、彼らがまだ若いということ。古臭さを感じさせず、若いゆえに勢いがあり、フレッシュさがあるのだ。その年齢、そのときにしか出せない音があるのだとしたら、ダイヴはその音を確実に掴んでいる。
サウンドのアイディア自体は借り物であったとしても、リヴァーブなどエフェクターを多用し繊細なギターを重ねて得られた響きに、疾走感あるベースとドラムで支えて生み出された若いうねりにお客さんたちは反応しはじめ、体を揺らして応えていく。そして、お客さんたちの気持ちが高まりつつあるのをみたザカリー・コール・スミスが叫び声を上げるとステージ前のお客さんたちは腕を上げて歓声を上げるのだ。気がつくとレッドマーキーはお客さんたちで埋まっていた。外をみると雨が降ってきたので、雨宿りの人もいただろう。だけど、多くの人にみてもらわないといけないわけだから、こうした偶然のチャンスをモノにできるというのは実力と考えてもいいだろう。多くの人にダイヴの名前を刻みつけたのだった
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