雨を吹き飛ばす、愛と歌声
1時間ほど前から降り出した強い雨は、彼らのライブが始まっても降り続き、観客の体を冷やしていく。そんな中、まずはTHEATRE BROOKの4人が先陣を切ってステージに登場。「初めてグリーンステージで演奏させてもらいます。お願いやから、雨止んでほしいですね」と語りつつ、昨年12月にリリースしたアルバム『最近の革命』収録の“キミを見てる”を披露し、グリーンステージに熱を届ける。続く“ありったけの愛”では、「みんなきっと分かってる この雨が必ず上がるということを」と歌詞を変えて歌い、観客を大いに沸かせた。するとどうだろう、さっきまで本降りだった雨の勢いが、少しずつ落ちてきた気がする。
佐藤タイジ(ギター&ボーカル)が「それでは紹介しよう。俺たちの、俺たちの、加藤登紀子!」と語ると、鮮やかな真っ赤な衣装に身を包んだ加藤登紀子がステージに登場。グリーンステージから大きな拍手が送られる中、歌い始めたのは、“Power to the People”!もちろん観客は大合唱だ。観客を指さしながら、ステージを左右に歩く加藤登紀子。どこか凛とした強さを持った歌声がグリーンステージに響けば、その歌声に遠慮したのか、雨もすっかり上がっている。
「雨上がりましたか?そういうこと。ピープルパワー、だね。フジロック、素晴らしい!本当にありがとう」とステージで語り、雨上がりを観客と一緒になって喜んでいる。そして、2日前に佐藤タイジの子どもが生まれたことを明かすと、グリーンステージからは温かい拍手が巻き起こった。佐藤タイジも「こんなところで発表できて嬉しいです。未来の塊が生まれました」と照れくさそうに笑っている。
そんなトークの後は、2人で“愛と死のミュゼット”をデュエットし、会場を大いに沸かせる。ニコニコと楽しそうに歌う加藤登紀子の表情がとても印象的だ。会場から一際大きな歓声が上がったのは、“イマジン”のカバー。2番は四半世紀ロックの告井延隆(ギター、パーカッション、ピアノ)が歌い、彼女が日本語の対訳を朗読し、曲が持つメッセージを大切に届けている。
「50年前にザ・ビートルズやローリング・ストーンズがデビューして、入れ替わるようにエディット・ピアフが亡くなりました。その50年間を感じてほしい」と語って、エディット・ピアフの“愛の讃歌”を披露する。THEATRE BROOKと半世紀ロックのバンドサウンドをバックに、両手を広げながら、高らかにその歌声をグリーンステージに響かせていった。
「素晴らしいですね、この空間。緑がいっぱいで、みんなが自由で、フジロックは本当に素晴らしい!」とステージ上から会場を見回した加藤登紀子。そして「私たちの一番新しい曲を、初めて発表します」と語り、9月公開の映画「キャプテンハーロック」の劇中歌“愛はあなたの胸に”を披露する。彼女にとって「人生初のロックナンバー」であるこの曲は、冒頭がフランス語からはじまり、やがて愛の歌として強い熱を帯びていく。
最後に、「みんな元気でね。大きな愛で、素晴らしい人生を。かっこよく生きようね。輝いて生きようよ。また会いましょう、ありがとう」と語り、ステージ上で全員が横一列に並んでカーテンコールした9人。グリーンステージからは、いつまでも温かい拍手と歓声が送られていた。
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