アスワドの魂、再び
年齢層の高いフジロッカーズにとってはアスワドと言えば、70年代のレベルミュージックとしてのブリティッシュ・レゲエの雄のイメージが強いだろう。要はザ・クラッシュと並行してお勉強として聴いていたロックリスナーも多いと思う。そしてその伝説的なバンドのリードボーカリストは、ソロシンガーとしてポップ路線も通過しながら、今またルーツレゲエの良さを堪能させてくれる。
プロフィール写真のイメージより全然若く精悍なルックスのブリンズレーを中心に、バンドはイタリア人ギタリストを含む、ベース、ドラム、キーボードと3管というフルラインナップ。本物のワンドロップというには少しR&Bのニュアンスも感じるバンドだが、やはりレゲエ必須の太くブーストするベースがたまらなくいい。ブリンズレーの艶と伸びのあるボーカルはもちろん魅力的だが、軽妙に話せる日本語を駆使してのサービスも忘れないあたり、ポップスの世界で長く活躍するシンガーならではだ。
途中で、アスワドの他のふたりのメンバーの名前を挙げ、メドレー的に懐かしいナンバーを繰り出す場面も。レゲエのビートは豪雨と灼熱が交互にやってくるタフな天候をつかのままったりさせてくれる効果もあって、できればラム系のカクテルなんか飲みながらぼんやり揺れていたかった…。もちろんメッセージの中身はタフだ。それでも横ノリのゆったりしたグルーヴはゆるやかなポジティビティを人の気持ちに発生させる。
終盤には40年に渡る音楽活動で初めてとなるソロアルバムの名前『アーバン・ジャングル』を発表し、オーディエンスにもタイトルコールさせる場面も。ルーツレゲエに原点回帰したこのアルバムは彼が長年やりたかったことなんじゃないだろうか。そして今回のフジロックへの参加も、改めてあの頃のメッセージを伝え続ける意思表明を汲んでのものだったに違いない。
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