ベッド・ルームから生まれたカラフルな音楽
宅録系アーティストなど、スタジオ録音に重点を置いていると思われるアーティストのライブが録音物以上の内容だったとき、ライブの感動はひときわ大きくなる。今回のトロイモアのホワイトステージでのライブも、そんなライブのひとつだった。
トロイモアはアフリカ系の父親とアジア系の母親を持つ、アメリカのコロンビア在住のチャズ・バンディックによるプロジェクトだ。彼は作曲活動を自分のベッドの上で行うという。宅録系ならぬ、”ベッド・ルーム・クリエーター”だ。ライブでは、ボーカル・キーボードを担当するチャズを、ギター、ベース、ドラムのサポートメンバーで支えている。チャズは昨年のHostess Club Weekenderのときよりもだいぶ伸びたアフロヘアに眼鏡、白いTシャツに無地のパンツ…と、本当にたった今、ベッドルームからでてきたような服装だ。同級生にトロイモアがいたなら、確実に「音楽に詳しい、いい奴」ポジションである。
最新アルバム『Anything in Return』の収録曲「Rose Quartz」からライブはスタートした。かなりの部分を生演奏で再現していた。実際にライブをみてみると、彼の音楽をチルウェイヴというジャンル一括りにしてしまうのは、乱暴だということがよくわかる。確かに浮遊感のあるチルウェイヴな楽曲がメインではあるが、80年代ブラックミュージックにエレクトロのスパイスを加えたようなダンス・ナンバーも非常に多いのだ。その両方をうまく組み込んだセットリストでライブに緩急をつけ、観客を心地の良い揺らぎへと誘っていった。ラストは「Say That」でライブを締めくくった。
今日、彼のライブをみて思った。ベッドルームからこれだけバラエティのある音楽を作れる彼の夢もまた、きっとカラフルなものに違いない。
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