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Posted on 2013/07/28 14:30
  • ライブレポート
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DAUGHTER

音で語られる言葉

ドーターはシンガー・ソングライターのエレナ・トンラが中心となり、ロンドンで結成されたの3ピースバンドだ(当初はエレナのソロ・ユニットだった)。エレナが大学在学中にイゴール・ヒーフェリ(ギター)と意気投合し、そのまま2人でバンドを結成。そして、サポート・メンバーとして参加していたドラムのレミ・アギレラを加入させて現在の3人体制となった。開始時刻の前からメンバー自ら(サポートメンバーもひとりいる)サウンドチェックをおこなっており、メンバーの名前を呼ぶお客さんもちらほら。「Elena, I love you!」なんて声もあったけど、エレナとギターのイーゴルが付き合っているのを知ったら、その声の主はきっとビックリするだろう。

グリーンステージではウィルコ・ジョンソンのライヴ(ラスト・ライヴだなんて絶対に言わないよ)があるにもかかわらず、ドーターを観にきた人たちは生粋のインディ・ミュージック好きだろう。裏に集客力のあるアーティストがいるときの、コアなファンだけが集まる、ものすっごおおおっく密度の濃いライヴだった。だって、曲の演奏を終えるたびに拍手の音が大きくなっていったんだから。

1曲目は“Still”。ゆったりとしたテンポからはじまり、BPMが徐々にあがっていくなかでエレナの妖艶な声とイゴールの轟音ギターが絶妙に絡み合う。恋人同士だからこそ出せる色彩というか、お互いを信頼しているからこそ生まれる優しい音だ。聴いていると、本当に心が落ち着く。演奏が終わったあとの拍手や歓声といったオーディエンスのリアクションがすさまじく、みんなドーターを観られることを心待ちにしていたことがうかがえる。

中盤に披露された、“Human”の歌詞は字面だけ読むとかなり暗いんだけれど、聴いていると一縷の希望のような明るい光を感じたのは何故だろう。エレナが「歌詞の中には「死」に対する興味や示唆みたいなものがたくさん出てくる。少しダークではあるけど、必ずしも陰鬱な意味ではなくて、「死」というものに対する純粋な好奇心ね」と語っているように、「死」というものをネガティブなものではなく前向きに捉えようとしているからかもしれない。

ドーターの楽曲たちがもつ前向きな明るさは、言葉ではなく音で表現される。“Tomorrow”のラストの部分はただひたすらに重ねられるギターとエレナの「オー、オッオー」というコーラスだけなのに、この上ない多幸感をもたらす。そして、最後に演奏された“Home”では初日のマイ・ブラッディ・ヴァレンタインを彷彿とさせる、すさまじいホワイトノイズが降り注がれ、レッドマーキーのオーディエンスを甘美な世界へと誘った。

ドーターはアルバムに収録されていない楽曲(ラストの“Home”はEP収録)の質も非常に高い。また、今日のライヴは45分という短い時間だったため演奏されなかった曲もたくさんある。なので、エレナが最後に発した「See You Soon」という言葉を信じて、再び彼らと会える日を心待ちしたい。

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