女帝、そしてビッグバンドの巧
70年代から活動を続け、渋さ知らズなどフジロックとゆかりのあるアーティストとも共演経験のあるデヴィッド・マレイ。そんな彼の率いるビッグバンドがオレンジコートに有終の美を叩きつけにやってきた。北海道JOIN ALIVEにて初見のオーディエンスを虜にする名演を行ったという噂を聞いてか、はたまたビッグバンド、そして歌姫メイシー・グレイを見にやって来たかのどれかもあるだろう。ボードウォーク終点の地、オレンジコートには大勢の人がつめかけている。
まずはビッグバンドのメンバーが登場。二列に並ぶホーン、フルート隊とマエストロ兼テナーサックスのデヴィッドがジャズステージたる演奏で地ならしをする。大柄のホーンのメンバー達は若く見えるが、さすがこの人数。メロディーも旋律も一連隊のごとく厚みと完成度がある。向かって右側がそんなホーン隊で、左側はバンド舞台とでも言おうか、サウンドの骨格にあるのはそのユニットとなる。そこへさらにキーボード(グランドピアノ&オルガンという豪華さ!)がメロディーのきめ細かさを足していく形だ。
メイシー・グレイは序盤から登場。スパンコールのドレスに、太さと優しさを掛け持つ声質。表情豊かな振る舞いで我々を扇動する様は、時折フィーチャリングされたアーティストというよりも彼女の公演なのでは…?と錯覚すらさせた。披露されたのは、彼女が表題曲を歌ったデヴィッドの最新作『ビー・マイ・モンスター・ラブ』のようなしっとりと聴かせるものというよりは、彼女のボーカルとしての弾力感を活かした楽曲、アレンジが主体となったような印象を受けた。
中でもスペシャルな瞬間はといえば、アーケード・ファイアの”ウェイク・アップ”のカバーだろう。曲の出だしでメーシーがオーディエンスに手を左右に振らせてから、次はシンガロングが気持ちのいいコーラス部分を「おっきな声をちょうだい!」と煽る。楽しさに浸る我々は歌わざるを得ないだろう。あの瞬間は実に印象深い…なぜなら「声が小さい!」と言った具合に3度4度とやらされたこともあって…(笑)。
ビッグバンドスタイルは演奏のみからメイシーが登場し数曲歌うというスタイルの繰り返し。彼女がステージから退けば、その間を演奏の巧み、ことに低音のスパイスがほどよいデヴィッドのテナーサックスが存在感を示す演奏パートがあるといったものだ。観客をしゃがませてはジャンプさせるといったような演出、「せいいっぱいでっかい声だして!」といった強気なオーディエンスコミュニケーションとすきのない演奏を堪能させてくれた後に、最後はメイシー、ホーンとフェードアウトして、最後にバンド隊がシメるといった形で90分は終始濃密な音楽に過ごせた。
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