フジロック1日目、それまでの天気とは変わって強い日差しが会場全体に降りそそぎ、何もしなくても汗ばむくらいに気温が上がった。

　それぞれのステージで1発目のバンドを楽しんだあとで、では次にみるのは？ という感じでオレンジコートのジェームス・イハを選んだ人も多いだろう。2年前のレッドマーキーでのライヴがまだ記憶に新しく、あのときのステージを思い出してきているのではないだろうか。

　オレンジコートは灼熱といってもいいくらい暑い。ちょうど昼どきで飲食の屋台にも人が並んでいるし、トイレにも長蛇の列。オレンジコート自体がけっこう賑わっている。

　14時20分ころ、定刻でメンバーが登場する。イハとサポートメンバー2人だ。そのうちひとりはキーボードを担当し、このあとホワイトステージでおこなわれる高橋幸宏のライヴでもイハと共にステージに立つ堀江博久だ。まずは、”Make Believe”からはじまる。サポートメンバーの弾くウクレレが、この暑すぎる苗場に涼しさをもたらす。2曲目は「マイケル」と名付けられたドラムマシーンのボタンを押し、サポートの人がウクレレからエレクトリック・ギターに持ち替えて”Summer Days”。まさにこの日にふさわしい曲。”Gemini”、”Speed of Love”と演奏して、スマッシング・パンプキンズ時代にイハが作曲した”Blew Away”。 “Disarm” のB面という扱いの曲だったけど、スマパン時代のファンから歓声が上がる。

　1stアルバム『Let It Come Down』から”Country Girl”。前回のフジロックや単独公演で「ライヴはよかったけど、1stからの曲が少ない」という気持ちを抱いていた人に応えるような選曲だった。”Appetite”、”To Who Knows Where”そして”Till Next Tuesday”。時折吹く風が扇風機のように涼しさを感じさせ、イハの決して上手くない歌だけど、やさしい手触りのアレンジと、心地よいメロディが混ぜ合わさって夢のような空間を作る。フジロックにいるという夢、「次の火曜日まで/ぼくを起さないで」と憂鬱な状態から逃れるための”Till Next Tuesday”という歌だけど、これは月曜までフジロックに浸っていたい人たちの歌のようにも聞こえてくる。

　再び1stアルバムから”Be Strong Now”、スマパン時代の”Mayonaise”（この2曲の歓声の大きさが一番だった）を経て、ローリング・ストーンズのカヴァーである”Salt of the Earth(地の塩）”。最後にイハはスマートホンでお客さんたちの写真を撮りさわやかに去っていったのだった。