CLAUDE VONSTROKE
重低音の魔術師
22時50分、レッドマーキー。開始10分前になるが、裏でアーケイド・ファイアが素晴らしいライブを行っている最中だけに、マーキーはガラガラだ。
トライバルサーカスのトップバッターは、サンフランシスコを拠点に活動するDJ/プロデューサー、クロード・ヴォンストロークことバークレー・クレンショー。ここからどれだけの人が彼のプレイに酔い痴れに来るか。23時オンタイム、ステージにヴォンストロークが現れた。
二日目の23時というと、少し(人によってはだいぶ?)疲れが出てくるころ。しかしそんなオーディエンスの状態になんて、ヴォンストロークはおかまいなし。1曲目から骨太ゴリゴリのドラムンベースで攻める攻める。音を聴きつけた人達がマーキー内に集まってきた。さあ楽しいトライバルサーカスの始まりだ。
さまざまなパターンを繰り広げるリズムマシンに、絶妙のタイミングで差し込まれるボーカルサンプリング、幾層にも重ねられた予測のつかないトリッキーなシンセサイザー、縦横無尽に放たれる飛び道具。さらにDJセットの背後には無機質な街並みや幾何学模様に加工を施したVJが投影され、視覚で楽しませることも忘れない。カラフルなピンスポットや照明のフラッシングなど細かい演出まで計算がなされており、音だけではない総合的なプレイスキルの高さが窺える。
身体を突き抜けていく高音域のボーカルサンプリングに畳み掛けるようなブレイクビーツ。ヴォンストロークの意図したとおりにオーディエンスのテンションは上がり、ピークのポイントでは大きな歓声と諸手が上がる。みなもっともっと重低音の魔術師に踊らされてしまえばいい。
ふと気づくとマーキーは入り口の外まで人が溢れている。最初はステージでヴォンストロークが楽しそうに大きな体を揺らしてプレイするのが見えていたのだが、今やもうその姿も人垣で確認できない。
正直、見る前は23時〜1時という時間帯と2時間というロングプレイに、途中で疲れてしまうかも…なんて心配もあったのだけれど、実際始まったらそんな予想は完全に杞憂だった。
彼の幅広いキャリアを証明するかのような、ヒップホップ、ドラムンベース、ハウスといったさまざまなジャンルを貪欲に取り入れたプレイスタイルで、オーディエンスを飽きさせることなく、どこまでもテンションを上げていく。これだけ長時間のプレイなのにまったく散らかった印象を受けないのは彼のベテランとしてのスキルのなせる技だろう。まったくお見事としかいいようがない。疲れた体でも思わず踊らされてしまう、魔法にでもかかったような二時間だった。
posted on 2014.7.26 23:00
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