ÁSGEIR
現実離れした幻想性がある歌
シンガー・ソングライターのアウスゲイルの存在を知ったのは、それこそフジロックがきっかけである。ラインナップを眺めていて、何気なしに聴いてみたところ、大げさのように思うかもしれないが、本当に一小節ほどで息をのむほどの何か惹きつけられるものを感じた。たぶん、それは彼の声と歌の…美しさ、優しさ、儚さ、脆さ、強さなど、そのすべての要素の真ん中をいくようなところに引っかかったのではないだろうか?と今は思う。真ん中を進むって、実は何気に難しい。何かに極端に寄った方が表現としては分かりやすいけれど、必然なのか、自然な流れだったのかはおいておいて、真ん中、いわゆる様々な要素を少しずつ持ち合わせているような声であり、歌であるのだ。
と、前フリが長くなってしまったが、そのアウスゲイルがホワイト・ステージに登場。今回はバンドセットでのライブとなる。初盤に演奏されたのは、”Head in the Snow”、”Higher”、”Summer Guest”、”Going Home”など。サウンドは、比較的、楽器の音数をできる限り削ぎ落とし、またヴォリュームも抑えられ、歌に重きを置いた構成に。それだけに、曲毎にその音楽の輪郭がくっきりと浮かび、歌の深淵を覗かせるようなところがある。楽曲のテイストとしては、エレクトロニック・ミュージックにフォークが混ざった繊細な幻想性があるものと言えば分かりやすいだろうか…。ただ、音楽のルーツとしては、クラシック、グランジ、エレクトロニック・ミュージック、自身の出身でもあるアイスランドのシンガー・ソングライターなど、幅広く通ってきている彼。しかも、アウスゲイル自体、活動歴で言えば、まだまだ駆け出したばかりだ(とはいえ、短期間で北欧の数々の賞を受賞しているという素晴らしい経歴も合わせ持っている)。だから、現時点では、というところで、今後どう進んでいくのかはまだまだ未知数の状態ではある。
ライブは、ちょうど夕刻時だったこともあり、柔らかな光が差し込み、さらに会場は現実離れした幻想的な空気が滲み出てくる。朝が雨だっただけに余計そう感じるところもあるが。だから、オーディエンスはただただその姿に見とれている人、ほんの少し身体を動かしながら静かに口ずさんでいる人、後ろから見守るように観ている人と、そこまで大きな動きはない。が、終盤に演奏された”In Harmony”、” King and Cross”は先程までよりアコースティック感が強く、またラスト曲”Torrent”はバンドとしての要素が高く、まったりめだった観客もどんどん大きな歓声を。ますます、彼がどういう風に変化していくかがとても楽しみになった。今回、MCはほぼなしだっただけに、ちょっと意外だったのだけど、演奏が終わると、最後には集まったオーディエスのみんなを『iPhone』で撮影というヒトコマも。最後の最後だけチャーミングな姿を見せてくれた。
posted on 2014.7.27 16:30
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