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7/27 SUN木道亭

猪股 and the Guitar

大人にひびく日本語ロック

今日の朝一のレッドマーキーに登場したフォノトーンズのベーシスト猪股ヨウスケ。彼はドクターダウナーというバンドのギターボーカルも担当している。そんな彼がソロの歌い手としてギターを抱えて小雨の降る木道亭に登場した。

「やりまーす」「通りすがりの方も適当に横目で見て下さい。」「適当にふわふわやって下さい。」

なんともゆるいMC。そしてすでに適当という言葉を二回も使っている。そう言うならこちらも肩の力を抜いて見させてもらいます、なんて雰囲気に飲まれそうになったのだけど演奏が始まると打って変わって圧の強い声がまっすぐに耳に飛び込んできて、ぐっと胸を掴まれた。

ソロ作品はないため、今日はドクターダウナーの曲の弾き語りが中心だという。一曲目は“レインボー”。「くだらないことばかり どうでもいいことばかり 一切合切そうさって言ってりゃ曇り空」。投げやりな感情が入り混じった言葉が強く耳に残る。ああ、なんかわかるなこの人の感じ。この人の中にあるなんだかしっくりこないその感じ。それって私の中にあるものとそう遠くない気がする。などと同い年であるのをいいことに勝手な共感の嵐がおさまらなくなった。はたまたカバーで披露されるのが奥田民生の“イージューライダー”だったりするから、「ああ民生好きですよね、そりゃ好きですよね。」とここでもまた共感。「この曲の“きっとそういうことなんだろう”は投げやりに見せかけて実は投げやりでもない感じが好きだ」と彼は言う。言葉にはうまく表せないけど大人になってもなんだかまだ自分を受け入れきれずに嘆いたりしてしまう人間への応援歌みたいな曲なのだと私は彼を通じて気付くことが出来た。

ちょっとダメ気味な大人に響く、日本語ロック。ステージ上の彼をじっと見つめ、その言葉のひとつひとつを噛み砕くように聞き入っているような面持ちの人は、やっぱり同世代くらいの人に見えた。

ラストに披露された新曲では「日が昇って沈む あいだをすり抜ける俺たち 悲しみ憎しみ幸せも全部抱えていく」と歌う。なんかいろいろあるけど、なんだかんだで日が昇って沈んだら明日が来る。彼も言うように「楽し死にしそう」なフジロックも毎年待っているわけだし、とりあえずなんとなく適当でもいいから生きよう。そんなふうに思った。

「あ、終わりです。」てな感じで締り悪くライブは終わったのだけど、雨は止んでいてなんだか足取りは少し軽くなっていた。

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