TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
天国に現れた、一夜限りのパラダイス
最初にスカパラがフィールドオブヘブンで大トリをやると聞いたとき、正直「え?なんでヘブン?お客さん入りきれるの?」というのが率直な感想だった。スカパラは今年でフジロックへの出演が8回目(!)になるけれど、直近の07年、09年、11年だけを振り返ってもすべてグリーンステージなのだ。ヘブンというある種特別な空間でいったいどんなライブを見せてくれるのか。
雨が降る中、開始までまだ15分以上あるのにすでにヘブンは7割方埋まっていた。下がっていく気温に反してお客さん達の熱量はどんどん上がっている。待ちに待った21時30分、華やかな照明とともについにメンバーが現れた。大きな歓声の中、「一緒に楽しもうぜ!」という一声で始まったのは”SHOT IN THE DARK”。歓喜に沸いたお客さん達が、一斉に音に合わせて踊り出す。その後も”AFTER THE RAIN”、”YOU DON’T KNOW(WHAT SKA IS)”、”MAN IN THE STREET”、“James Bond Theme”など、おなじみのナンバーが続々披露されていく。さすが結成25周年の大ベテラン、観客の踊らせ方も楽しませ方もよくわかっている。数百人の手が上がって左右に揺れているさまは、キラキラ光る雨と相まって、本当に美しい。
後半はさらに攻めのセットリストが続く。“ペドラーズ”、”SKA ME CRAZY”、“ルパン三世 ’78”、”White Light”など、これで踊らずになんていられるわけがない!というダンサブルな曲の大放出。途中から雨脚が強くなっていたけれど、誰もそんなことおかまいなし。ずっと全力疾走できるメンバーもお客さんも本当にすごい。
「俺たちこれが初めてのヘブンなんだけど、パラダイスがヘブンに来たら、ただごとじゃないでしょー!」というMCは、まさにそのとおり。雨の中、ヘブンにこんなに人が入ってこんなに大盛り上がりしているのを見るのは初めてだ。メンバーが飛び跳ねる、観客も飛び跳ねる、もうヘブン全体がダンスフロア状態。3日分の疲れが溜まっているどころか、その疲れが全部外へ出て行くようだ。
よく見たらヘブンをぐるりと囲んだお店の人達まで踊っている。こんなのグリーンやマーキーじゃ絶対に見られない!以前某TV番組で谷中さんが「会場でお客さんの中にノってない人がいることに耐えられない(笑)どうにかして踊らせたいんだよね」と言っていたが、今夜のヘブンにノってない人なんて一人もいなかった。ちびっこからお店のおばちゃんまで、みんな最高に楽しそうな笑顔で踊っていた。
前述した通り、今までスカパラというとグリーンステージの印象がとても強かったのだけれど、今夜のヘブンは熱気や興奮や喜びや感動が小さな会場中にぎゅっと凝縮されていて、グリーンとはまた違う素晴らしさがたくさん詰まっていた。バンドのテンションとお客さんのテンションの応酬が、それこそ汗のかかりそうな距離で交わされる。会場を包み込む、大きな大きなグルーヴ感。スカパラというバンドとフィールドオブヘブンという会場には、まだ見ぬ可能性がいくつも隠されているのではないか。
そして、25年もの長いキャリアを持ちながら、いつまでも新鮮な喜びをもたらしてくれるスカパラは、あらためて素晴らしい、至高の存在だ。
「Paradise goes on」 。これから先の10年後も20年後も、そういうバンドであり続けてくれるだろうことは、彼らが謳うこの言葉にしっかりと示されている。
そしてフィールドオブヘブンという天国の中に現れた今夜のこの楽園は、バンドとお客さんが一緒になって作り上げた、一夜限りの特別なものだった。そんなふうに思うのだ。
posted on 2014.7.27 21:30
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