KITTY,DAISY & LEWIS
ダーラム家族による音楽の愛し方
4月の来日公演が大盛況だった、キティー・デイジー&ルイスがヘブンに登場だ。先ほど暑さが嘘だったかのように、厚い雲が空を覆い、涼しい風が吹いている。会場には、グレイトフル・デッドの音が心地よく流れ、ヘブンっぽさを一際醸成している。昨年、この地にフィル・レッシュが立っていたのだ。マスタリング・エンジニアとして活動してきた3兄弟の父親であるグレーム・ダーラムが入念にサウンドチェックをしていて、若干押し気味だ。
会場に、ホット・バターの”Popcorn”が鳴り響けば、バンド登場の合図と察知しハンドクラップが巻き起こる。ゴールドのジャンプスーツに身を包んだキティーを筆頭に、ルイス、父親のグレーム、ザ・レインコーツの元メンバーだった母親のイングリッド・ウェイスがステージに姿を見せた。4名が一斉に”Bitchin’ in the Kitchen”のリズムを刻むと、キティーと対照的なシルバーのジャンプスーツに身を包んだデイジーがタンバリンを片手ににこやかに登場し、「フジローック!」と一言。フロアはのっけからノリノリだ。
続いて、キティーがステージ中央に出てきて、「飛行機で着いたばっかりなの。このショウをほんとに楽しみにしてたのよ。来てくれてありがとう!」と”Feeling of Wonder” のいなたいギターフレーズを奏でて歌い上げ、更に会場を盛り上げるのだ。今度はルイスが、キーボード前に座り、”Baby Bye Bye”の軽快に鍵盤をたたけば、フロアから大きな歓声が上がる。レゲエ調のバックビートが効いたキャッチーな音の波の上を上下に揺れ、大盛り上がりだ。
初めて目撃したが、彼らのマルチ・インストゥルメンタルっぷりは本当にすごい。楽曲が変るごとに楽器をガンガン持ち替え、どれも最上の巧さで聴かせる。特にキティーの叩き出すドラムのビートは最もパワフルだ。”Don’t Make a Fool Out of Me”や”Whenever You See Me”に顕著だった。ロックンロールのマナーに沿った硬派なキティーのドラムに対する姿勢は、観ていてスカッとする。
先日の来日公演でも登場したスペシャルゲスト、エディ・“タンタン”・ソートンをステージに呼び込み、トランペットで”Turkish Delight”の出だしのフレーズを奏でると、辺り一面にスカダンスの嵐が吹き荒れた。曲が終わっても、「愛してる!I love you!!」と大はしゃぎのタンタン爺さん。「タンタンのためにもう一曲どうだ?」とルイス。トランペットをあらん限りに吹き上げる”Good Looking Woman”でフロアを歓喜させて、タンタンは大満足の面持ちでステージを後にした。
ラストはお馴染みのキャンド・ヒートのカバー、”Going Up the Country”でビシッとしめる。デイジーがかがんで、スネアドラムを叩きながら上目づかいに歌う様がたまらない。ルイスのピアノも、キティーのハーモニカもこれでもか跳ねまくりだ。大歓声の中、にこやかにステージを後にした。それにしても家族でこんなに楽しく演奏できるなんて、羨ましい限りだ。下手くそでもいい、回数も多い必要はない。家族みんなで音楽を楽しむ時間を少しでも持つことができれば、それだけで世の中はもっと平和になるんじゃないか。そう思わずにはいられないステージだった。彼らは深夜のクリスタル・パレス・テントに再登場する予定だ。言うまでもなく、観逃し厳禁だ!
-Setlist-
Bitchin’ in the Kitchen
Feeling of Wonder
Baby Bye Bye
It Ain’t Your Business
Don’t Make a Fool Out of Me
Turkish Delight
Whenever You See Me
Good Looking Woman
No Action
Whiskey
Going Up the Country