NOEL GALLAGHER’S HIGH FLYING BIRDS
「Don't Look Back in Anger」までの3日間。
フジロック3日目のヘッドライナーは、最後に盛り上がろうとする期待感と、これで終わりという寂しさが入り混じった気持ちで迎える。そんなお客さんたちの複雑なテンションに寄り添うライヴをノエル・ギャラガーはやってくれた。パーティ・バンドでアゲアゲにすることはいろんなバンドにできるけど、感傷に寄り添うことができて、ヘッドライナーを張れるアーティストは少ないんじゃないか。
ひとつ前にグリーンステージに登場したライドが非常にすばらしいライヴをおこなって、そのあとを受けて21時30分に「シュート・ア・ホール・イントゥ・ザ・サン」が鳴り響き、ノエルはバンドを引き連れて登場した。ハイ・フライング・バーズのメンバーと、日本人たちのホーン隊のサポートの8名がステージに立つ。まずは「Everybody’s on the Run」から始まる。
4月の来日公演からまだ日が経ってないこともあり、演奏された曲は共通したものが多かったけど、演奏順はかなり入れ替えてきた。スクリーン映像も共通したものが多かった。そして、(サポートのホーン隊を除き)世界中のライヴの場で鍛えられ、練り込まれたこともあって、安定感は十分、熟成されたうまみを感じさせた。日本人ホーン隊も奮闘し、しっかりノエルの音に厚みを加えていた。4曲目には早くもオアシス時代の曲「Fade Away」。最近はずっとそうだけど、アコースティックでスローな印象を与えるアレンジになっている。「Riverman」はホーンのアレンジが加えられ新鮮に響く。
中盤には「ライアン・アダムスに捧げる」と「Champagne Supernova」、さらに「Talk Tonight」で沸かせる。「Champagne Supernova」はサビの一部をノエルがお客さんに歌わせる。やはりオアシス時代の曲の反応はよい。
あと中盤で光ったのは「Dream On」で、ソロになってできた曲に深みが生まれてきているのだということがわかる。そしてこの日「スペシャルな曲だ」として演奏されたのは、オアシス時代の「Whatever」である。これにはグリーンステージにいる人たちも歓声を上げていた。この辺から後半へ。「If I Had a Gun…」はノエルのソングライティングがさらに進化している。
オアシス時代の「Digsy’s Dinner」を歌った後に、「『Dave says Hi!』ってなんだ?」とノエル。2日前にグリーンステージのヘッドライナーを務めたフー・ファイターズのデイヴ・グロールが、「ノエルに『ハイ!』って挨拶してくれ」とわざわざお客さんに対して練習までさせたものだ。そしてちゃんと言いつけを守ったお客さんに対して「デイヴ・グロール? 誰? 日本人?」ととぼける。「奴には休息が必要だな」と愛ある毒舌で返し、演奏されたのが「Half the World Away」。曲中の手拍子のタイミングも大勢の人たちがちゃんと決めていた。さらに「The Masterplan」とオアシス時代の曲を畳みかける。
ダンスビートな「AKA… What a Life!」を熱唱後、ついにやってきたこの瞬間が! イントロからお客さんたちの歓喜が爆発する「Don’t Look Back in Anger」。サビの大合唱。それはツイッターに「『サライ』(日本テレビが放送する『24時間テレビ』の最後に合唱する曲)みたい」と書かれているけど、まさに3日間いろんなことがあって、その最後の最後に待っていたのがこの大合唱だったのだ。お客さんたちの歌声は会場を取り囲む山々に響き渡り、このスペシャルな場所でしか生まれない体験が、たくさんの人たちに刻み込まれたのだった。
そしてステージを去っていくメンバーたち。お客さんはアンコールを求める。噂されていたジョニー・マーとの共演もみていない。まだまだ聴きたい曲はあるのだ。長い間拍手と歓声が続いていたにも関わらず、残念ながら再びの登場はなかったけど、「Don’t Look Back in Anger」の大合唱をもって、フジロックのグリーンステージの締めくくりとなり、お客さんたちに余韻を残していったのだった。