FUJIROCK EXPRESS '21

MOREFUNAREA REPORT8/22 SUN

私が見たフジロック(Day 3)from スタッフM

  • 私が見たフジロック(Day 3)from スタッフM

Photo by MITCH IKEDA Text by 三浦孝文

Posted on 2021.8.24 18:01

POWER TO THE PEOPLE!

 今年のフジロックもあっという間に最終日を迎えた。例年なら、3日目の朝に目が覚めた瞬間から終わってしまうことへの寂しさがこみ上げてきたものだが、もちろんその気持ちもあるものの今年は少し違う。とにかく平穏無事に終わってほしいと、フジロックが来年も開催されることを切に願う気持ちが強い。 

 今年のフジロック開催にあたって、ツイッターで「#フジロックの開催中止を求めます」ハッシュタグができるなど、主催者をはじめ、出演アーティストや全国から来場するフジロッカーが批判にさらされている。批判している人たちの言い分、意見や考えはごもっともなものが多いのも事実だし、批判や批評があって当然で何も悪くない。なぜ主催者は開催に踏み切り、演者は出演を決め、我々は現地に赴くのか。「なぜフジロックなのか?」ということに尽きると思う。

 私もフジロックに参加しはじめた頃は、お目当ての出演アーティストがいて、音楽を聴きに行くのが一番の目的として参加していた。毎年足を運ぶうちに、徐々にただ愛する音楽を聴きに行くだけの場ではなくなってくる。フジロックはフェスティヴァルなんだということを体感するのだ。音楽、アート、食事というそれぞれの分野で活躍している人たちが大切にしている表現、苗場の大自然の中でこそのフジロックだということ、地元湯沢町、新潟県との繋がり、主催者の想い、ここで出会った仲間たち、現場で新しく知り発見する社会のことなど、その総和がフェスティヴァルという文化を醸成し、自分の中でのフジロック像を形成してきた。ここに触れて感動するからこそ毎年参加し、現場を伝えたいというところからフジロック・エキスプレスにも参加するようになり、フジロックがない普段の大阪での日々もフジロック好きや音楽好きの集いである【フジロッカーズ・バー関西】をbig cakeでやらせてもらったりと、フジロックと繋がって生きている。これが私なりの「なぜフジロックなのか?」だ。

 最終日の印象的なライヴのことも振り返っておきたい。まず、GEZANだ。首謀者のマヒトゥ・ザ・ピーポーは、フジロックの直前に晶文社のスクラップブックでの連載『懐かしい未来』において「批判や責任の一端を背負った上で、個人的な切実さを理由にわたしはフジロックのステージを全うする。生きてるってこういうことだよなっていう一つの感触を、人と人が出会うことの意味を、2021年の混乱と光の同軸で鳴らし、記号ではない血の通った存在の振動でもって、苗場を爆発させる」と自分なりの考えを表明し、尋常ではない覚悟でフジロックにのぞむことを宣言していた。そして、宣言通りに、感動の渦を生み出して苗場を爆発させた。「それぞれの選択を」という言葉には、分断を求めない祈りにも似た感情が込められている。GEZANと同時間帯にホワイトステージに立っていたのがTHA BLUE HERB。MCのILL-BOSSTINOは、今回のフジロックをただの感動で終わらせない、補償とか枠組みとか仕組みを作る重要性について、そしてそれができるのは政治家たちだということを訴えキャップを脱ぎ、頭を下げた。思い出す度に感動して震えてしまう。そして、忌野清志郎 Rock’n’Roll FOREVER。 東日本大震災に新型コロナ、どんどん混沌としていく世界をキヨシローはどんな歌で表現しただろうか。どんな辛辣な言葉を浴びせただろう、どんな優しい言葉をかけてくれただろう、どんな可笑しな言葉で笑い飛ばしてくれただろうか。豪華出演アーティストたちが嬉々として繰り広げるまったく古びないゴキゲンなナンバーたちを聴きながら、雨が降り注ぐグリーンステージの前でみんなと一緒にて、この瞬間を噛みしめ涙が流れた。キヨシローの「愛し合ってるかい?」の投げかけに、ここには愛しかないと答えたい。

 怒っている人、おちゃらけている人、真面目な人、優しい人、混乱している人、かっこつけている人、世の中には本当に色んなあり方の人たちでいっぱいだ。それぞれがそれぞれの表現をしている。それぞれが大切なものを持っている。多くの出演アーティストたちが自分なりの考えを表明し、制限やルールがある中でも存分に楽しみことを自ら生み出していたお客さん。今年のまたとないフジロックを体験して、お互いの存在に向き合うこと、お互いが大切にしていることを大切に扱うこと、相手を自分の意に沿うように変えたりしようとせず、そのままを、あるがままを認め合うことの大切さを強く感じた。ありがとうフジロック!来年は、7月29日(金)、30日(土)、31日(日)の3日間、開催されることが決定した。みんなで愛してやまないこの場所にまた必ず帰ってこよう!

[写真:全1枚]

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