羊毛とおはな

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7/31 09:29  Twitterに投稿する


開演まで30分以上あるというのに、ステージ周辺はすでに満席と言わんばかりのお客さんで埋められている。この場所で羊毛とおはなを見ると決めていた人が多かったのだろう。2年前に立ったアバロンのステージも彼らの音楽にぴったりの場所だと思っていたが、今回の木道亭はそのとき以上に似合っているように思える。生い茂る緑と、辺りを漂うゆったりとした空気。苗場の自然が完璧な舞台装置として演出しているようだった。

羊毛こと、市川が奏でるギターの音色はどこまでも優しく、聴き手の気持ちを穏やかにさせる。日本語と英語を織り交ぜる千葉の歌も同様で、その光景は音楽の流れる絵本を見ているようだった。早い時間から待ち続けていたオーディエンスも、きっとこんな状況を期待してやって来たのだろう。微笑みを浮かべながらその演奏に耳を傾けている。穏やかな波のように揺らぐ静かな時間が続き、最後はタイマーズの名曲「デイ・ドリーム・ビリーバー」が歌われた。カバー曲もよく歌う彼らだが、この場所でこの曲を歌ったのは、昨年他界した忌野清志郎へのオマージュだろうか。最初は頭の中で小さく清志郎の歌を響かせながら聴いていたのだが、その歌声はやがて消えていく。それは、この歌に清志郎をダブらせるのではなく、しっかりとふたりの歌を聴きたいと思ったからなのだろう。

写真:近澤幸司
文:船橋岳大