森の中に吟遊詩人をみつけたという感じである。ホワイトステージからフィールド・オブ・へヴンに向かうボードウォークの途中にある木道亭というステージは、木々に囲まれて森林浴をしながら音楽を聴くことができるところである。お客さんたちは、次のステージへ向かう足を止めて、休憩、暇つぶしなどいろんな理由で木道亭の前で立ち止まってみる。もちろん、そのミュージシャンが目当ての人もいるだろう。
ローリー・マクロードは、まさに森の中のステージにぴったりの人で、ハーモニカを吹き、ギターを弾き語り、タップダンスを刻んでリズムを取り、音楽を生みだす。フォーク、ブルースを基本に、世界各地を旅して回り民俗音楽的な要素も感じられる。
ローリーは、客席からハーモニカを吹きながら登場する。フジロック3日目でお客さんたちの多くも疲れていることだろう。椅子に座ったまま眠ってしまう人も続出する中、そんな休息を妨げない優しい音楽を奏でる。といっても、歌詞の内容はシリアスなものもあるようで、ドイツにおけるトルコ移民のことを取り上げた曲もあるようだ。風邪気味で声が掠れたりすることもあったけど、食器(料理器具?)をパーカッション代わりにしたり、ハーモニカでパトカーのサイレンの音を再現したりと多芸多才なところもみせて午後のゆったりとしたひとときを、お客さんとともに過ごしたのであった。
写真:古川喜隆
文:イケダノブユキ