英国らしい、筋金入りのライヴバンド
イギリスのバンドだから天候の話しからしたい。苗場は相変わらず雨。強かったり、弱まったりするけど、雨が基本であることは変わらない。この灰色の空の下で観るバンドとしてカイザー・チーフスは最適なんではないだろうか。
ステージには新しいアルバム『ザ・フューチャー・イズ・メディバル』のイラストが背後に設置される。ライヴは”Everyday I Love You Less and Less”から始まる。ヴォーカルのリッキー・ウィルソンは白いTシャツをジーパンの中にイン、その上に黒か濃紺のコートを羽織り同じ色の帽子をかぶる。時折コートがひるがえり、チェック柄の裏地が見えるのが英国人らしくおしゃれである。どこからどう切ってもイギリスらしさに溢れるバンドなのだ。 ギターサウンドを中心に、キンクスとかザ・フーとかブラーとかそうした伝統の歌を引き継ぐ存在であるのだけれども、始まるときグリーン・ステージの前にいるお客さんは、さすがにモッシュピットは埋まっていたものの、他はちょっと寂しいものだった。本国との人気格差を思い知らされる。選曲は一応新しいアルバムから中心だけど、新旧の曲をまんべんなく演奏してくれた。さらに、日本でのPV撮影が予定されている”Man On Mars”も演奏された。
ライヴで叩き上げたバンドだけあって、熱のこもった迫力ある演奏をみせてくれたし、何よりもリッキーがエンターテイナーとしての本領を発揮。ステージを右から左まで走り回り、腕を高く挙げたり、と自ら動いてお客さんを煽る。クレーンカメラをみつめてキスもしたりした。”Ruby”では大合唱を求めたうえに、曲が終わっても、リッキーが「ルビルビルビルビィ~」とアカペラでコール&レスポンスを促す。”The Angry Mob”では、クレーンカメラに近づいたリッキーがイヤー・モニターを外し、「聞こえないぞ」という仕草をして、歓声を上げさせる。そうして、徐々にお客さんが集まってきて、最終的にはなんとか形になった。リッキーもフォトピットまで降りてきて、お客さんたちの触れながら熱唱。そして最後は”Oh My God”で締めた。この頑張りが報われるといいのに、と願わずにはいられない。
写真:中島たくみ
文:イケダノブユキ