明るい光の方へと誘い出す音とメッセージ
clammbonというバンドでの出演でなくとも、なんらかの形でほぼ毎年メンバーがここフジロックに参加しているイメージがある彼ら。もちろんバンドとしてもお馴染みの「顔」になりつつあり、ホワイト・ステージやフィールド・オブ・ヘブンなどで計4回もの出演を果たしている。そして5回目となる今回は、初となるグリーン・ステージのトップ・バッターを。開始直前になると、降り続いていた雨の勢いもおさまり、雲の隙間からほんのり少し光が。なぜか意味があるようにも感じられ、良いステージになる前触れさえも訪れてくる。
初盤は”KANADE Dance”や” NOW!!! “など、ノイズ感のあるナンバーで、頭の中をループするような音や声でたたみかけていく。かと思えば、「シカゴ」のような軽やかとも言えるピアノの旋律も。彼らの曲はどんなジャンルだとしても、一度聴くと内側に秘めていた気持ちが外の方へと向かって弾け出るような感覚にさせられる。きっとどの曲も自分らの枠内に閉じこもらず、いつも何か新しいものを生み出しているからだろう。楽曲の中で実験している感があるのだ。
また、今の世の中の状況だからこそ、よりガツンと伝わってくる”あかり from HERE”では、THA BLUE HERBのILL-BOSSTINOがゲストとして登場。自らがお手本となり、明かりを導きだすような歌詞を放っていく。周りを見渡すとつい下を向いてしまうことがあるが、その先を見据えることで明かりが射し込むことをしっかり教えてくれた。
最後のMCでは「レイ・ハラカミさんが突然、旅に出てしまいました。誰も真似できない音楽を彼は残してくれた。だから、私達は私達の生き方で進まないと。最後のこの曲をレイ・ハラカミさんに捧げます」という原田郁子の言葉が。そして、”Folklore”を歌いながら、「もっともっと、空にどうぞ」という合図を観客に送っていく。オーディエンスの声がどんどん膨らみ、実際にグンと空に突き上がっていくような実感も。やはりスタートから空に光が見えたのは、何か意味があったのだろうか。そう考えさせられるライヴだった。
今後も夏フェスや新作リリースとこの先も話題が耐えない彼らだが、今後もマイペースを崩すことなく進んでいってもらいたいものだ。
文:松坂愛
写真:熊沢泉 (Supported by Nikon)