ポップのマジックと癒しと
ファウンテインズ・オブ・ウェインは、いつでもいいライヴをする安定感というか、ベテランの風格を身につけてきたなぁと、しみじみ思わせるバンドになった。パーシー・フェイス・オーケストラの”Theme from A Summer Place”が流れバンドが登場。日本ではお馴染みのバンドなので、お客さんがけっこう集まってきている。新しいアルバム『スカイ・フル・オブ・ホールズ』が発売されたばかりでもあり、新しいアルバムからの選曲が中心だけれども、割と満遍なく彼らのキャリアから演奏されたので、新旧のファンが嬉しいものになった。
ベースのアダム・シュレシンジャーが英語で「日差しが強いからサングラスをしているんだ」とボケると、ヴォーカル/ギターのクリス・コリングウッドが日本語で「イミ、ワカンナイ」と突っ込む。特にステージ上を動き回ったり、煽ったりもせず、淡々と演奏していくスタイルなんだけど、やっぱりメロディとクリスの声質と、軽快なギターのサウンドが日本人に好まれるのだろう、”Red Dragon Tattoo”や”Survival Car”、”Mexican Wine”はステージ前に詰め掛けたお客さんちは両手を挙げて反応する。”Denise”では恒例のハンドクラップ大会になり、盛り上がりは、ラスト1曲前の”Stacy’s Mom”で頂点に達するのだ。
一方で、「日本を愛している。今年は大変な年だけど」と演奏された”Troubled Times”はグリーン・ステージ全体に、さらに苗場の曇り空に浸み渡るような歌声で、観ている人たち一人一人の心を癒してくれたのであった。
最後は”Sink To The Bottom”でこちらもしみじみとさせて終わった。相変わらずの雨が降ったり弱まったりという天気だけど、3分間ポップのマジックと少しの励ましを感じながら、お客さんたちもバンドに歓声を送っていた。
文:イケダノブユキ
写真:熊沢泉 (Supported by Nikon)