森にこだまする静かな歌声
京都や関西地区を中心に、現在は東京でも積極的に活動を行っている長谷川健一。姉妹サイトのスマッシング・マグで彼のレポートを行ったのは2年前になるのだが、関西以外でも積極的にライブを行うようになったのはこの頃だと記憶している。フルアルバムのリリースなど、その動向を追っていたのだが、わずか2年でフジロックという大舞台への出演を決めたのには驚かされた。
聞こえは悪いかもしれないが、長谷川の歌はいつ聴いても淡々としている。繰り返される単調なリズムは長谷川自身のペースなのか、どこまでもシンプルで抑揚がほとんど無い。それでいて一度歌を聴くと時間をかけて徐々に体内へと染み込んでくるようで、聴き手の耳から離れないから不思議なのだ。その印象は彼の歌に出会ってからの2年、ほとんど変わることがない。ただ、この日唯一いつもと違ったペースを感じられたのは、インストゥルメンタル・バンド、Nabowaとの共演用に書いたという「また明日」だ。柔らかい陽光をイメージさせるような楽曲は木道亭のステージにマッチしており、これまで見たことの無い長谷川健一のイメージを映し出してくれた。
オーディエンスにまじってNabowaのメンバーの姿も見られたので、このステージで共演が実現していたらと今さらながら思ってしまう。いや、それは今さらの想いではなく、来年以降への願いなのかもしれない。長谷川健一をバンドでサポートするNabowaのステージなのか、それともNabowaのステージにゲストで出演する長谷川健一なのか。そのステージを見たいと思うのはきっと筆者だけではないはず。いつの日か実現してほしいと願う。
写真・文:船橋岳大 (Supported by Nikon)