3日目、15時頃には一瞬だけ晴れ間が覗き、気に囲まれた木道亭は蝉の声と木漏れ日が差し込む最高なシチュエーションと化した。箱ものギターを鳴らし、1曲目はpupaから「Glass」。サポートにはサケロックのドラムス伊藤大地を招き、2人だけのシンプルな演奏が淡々と繰り広げられた。
古いジャズのナンバーだという「スウィート・スープ」では、伊藤の口笛が時折吹く涼しげな風とマッチしている。そして高田漣自身が昔つくった曲だと言う「あじ」では、「ひび割れた茶碗の隙間に 幸せのかけらを見つけましょう」と何気ない生活の中にある尊い幸せを歌う詞が印象的だった。
金子光晴の「古靴店」や菅原克己の「野ばら」などの詩に曲をつけた楽曲が披露され、ラストは「今日は、半分は演奏のために苗場へ来たけど、半分以上はこのバンドを観に来てる」とYMOの「Cue」をアコースティックバージョンで演奏すると喜びの拍手が鳴る。腰を下ろし、まったりとライブを眺めていた人たちが、素朴な音に合わせて体を揺らし、口ずさんでいる。木道亭にはひとときの安らぎの時間が流れていた。
写真:Julen Esteban-Pretel (Supported by Nikon)
文:千葉原宏美