見事に馴染んだ日本の血
4回にわたる来日を経て出演となったフジロック。おそらく、ジャポニクスの小宮山ショーゴ氏から、その規模や噂、魅力などを数々聞いていたことだろう。日本での横の繋がりも出来上がっており、正式なメンバーは3人だけにもかかわらず、ステージ上はとても賑やかなものだった。
ドラムが2つ、ティンパレスにパーカス、ホーン隊と、どんな音が飛び出てくるのか興味津々…そんな空気がオレンジ・コートに漂っていた。フジロックに合わせて、交流ある日本の友人たちとフジへの出演を盛大に祝う…そんな裏のテーマが用意されていたのではないだろうか。
マテ・パワーの基本にあるのはパンク。そこに、スカ、クンビア、ラテンにレゲエと、様々な味付けがなされていく。ディエゴ(B.&Vo.)は、声色すらも使い分けて、多彩な音の集合の中に、細かな触れ幅をつけていく。ティンパレス、パーカスともども、眉間の皺がくっきりと浮かぶような必死さで、ホーン隊も隙あらばと出しゃばってくる。何か、好き勝手やってくれ、との言付けがあったかのような暴れっぷりだ。
中盤、ジェンズ(Dr.)が「カジサン!」と叫び、梶原哲也(ex.ザ・ブルー・ハーツ、ザ・スリー・ピース、サンダービート)を呼び入れた。ローマのバンダ・バソッティが”情熱の薔薇”をカバーしたことや、ザ・スリー・ピースがヨーロッパで人気を獲得しているといった状況に、同じドラム担当として、尊敬の念を感じていたのだろう。
ステージ奥に陣取った打楽器隊の圧力に負けまいと、ホーン隊が吠え、せめぎあう。束ねられて太くなった縦揺れのリズムが、朝方の奥地を揺さぶっていく。そして、放たれたのが”リンダ・リンダ”だった。オリジナルよりもゆったりと、クンビアの味付けがなされているそれは、はっきりとした日本語で歌われ、オーディエンスからのコーラスを立ち上らせていったのだった。
文・西野太生輝
写真:Julen Esteban-Pretel