4年後のリベンジは雨振り でも気持ち晴れ晴れ
佐野遊穂「過去に、苗場で住みこみのアルバイトをしてたことがあって。・・・(中略)・・・でも、ご飯がすごく美味しいからすっかり太っちゃって。私、『ボーリングの球』って言われてたんですよ」
佐藤良成「ボウリングの球? ピンじゃなくて? 今日はどちらかというとボウリングのピンみたいだけどね」
佐野遊穂「そうね」
佐藤良成「まぁ、僕なんてマッチ棒って言われたことあるけどね」
・・・・・・と、こんな文字通り夫婦漫才のMCも魅力のアコースティック・デュオ、ハンバートハンバート。2007年、フジロック初出演となった苗場食堂での演奏はRED MARQUEEからの大音量で二人の演奏の音がすっかりかき消されてしまうという事件(?)があったが、今回はORANGE COURTへの出演となった。思わず一緒に口ずさみたくなる「アセロラ体操のうた」をはじめとするCMや映画への楽曲提供を経て、彼らがこの4年の間に着実に人気を獲得してきたことが、集まった観客の多さからうかがえた。
朝一番の出演ということもあり、ペールギュントの「朝」をSEに二人は登場した。そして「白雪姫」で7人の小人が歌うことでお馴染みの”Heigh-ho”からステージは始まると、雨続きだった苗場についに晴れ間が見えてきた。7月にリリースしたばかりのアルバム『ニッケル・オルデン』から、軽い曲調に似合わぬ皮肉たっぷりな歌詞が面白い「桶屋」、そしてインタビューの中でも彼らの転機になったと話している人気曲「おなじ話」を2人だけのシンプルなアレンジで披露すると、その後はギター、マンドリン、パーカッションを加えたバンド編成でステージは進んだ。
MCで、フジロック前にアメリカでハンバーガーを買う夢を見たと話した佐藤良成。
「遊歩があまりお腹が空いてないというから、ハンバーグをシェアしようとしたら、『日本人はハンバーグまでシェアするのか』と言われちゃって。”Most of American food is too big especially for Japanese Women! “って言ったんだけど、身振り・手振りを入れて話すもんだからさ、疲れちゃって寝た気がしなかったよね」
・・・と、こんな夢をみたも今回のライブでのアレンジを思う余り・・・・・・というのは単なる私の推測だが、「波羅蜜」はよりファンクネスを帯び、「おいらの船」はブルース調になっていたりと、アメリカン・ルーツ・ミュージックをベースとしたアレンジが新鮮だった。「おなじ話」といった昔からのライブ定番曲を聴けることも勿論嬉しいことだが、こうやって比較的新しい楽曲も演奏の編成を変えながら常に新しいアレンジで聴かせていくところが、彼らが新規のファンだけでなく、昔からのファンの心も掴んで離さない理由だろう。
残念ながら一度は晴れ間を見せた苗場の空模様は実に気まぐれで、ラストの曲「アセロラ体操」で「た・た・た・たいよう〜」と歌う頃には土砂降りになってしまったけれども、気持ちは晴れ晴れ。彼らの魅力を再認識したライブだった。
[Set List]
1.Heigh-ho
2.桶屋
3.おなじ話
4.百八つ
5.波羅蜜
6.虎
7.おいらの船
8.罪の味
9.アセロラ体操のうた
写真:船橋岳大(Supported by Nikon)
文:本堂清佳