GREEN STAGE, | 2012/07/28 03:15 UP

CHE SUDAKA

トラブルを利に変えた、チェ・スダカのフジロック一発目

彼らのライヴは、体験してみなければわからない。フジロックでライヴ1000回目を迎えるた彼らは、その経験によって培われた見事なまでのオーディエンス掌握術を見せてくれた。実のところ、それはマイナスから生まれたものだった。

前夜祭の出演で勢いに乗ったオンダ・バガを食ってあまりあるサービス精神は、のっけから発揮された。アコースティックギターを抱えたレオは、瞬間ごとに表情を様々に変えながら、ギターとサービス精神を振りまいていた。

前半のセットは、南米出身者が4/5を占める彼らが、カタルーニャに移ったあとで会得した、「ルンバ・カタラン」の楽曲が中心となっていた。2007年の、『Mirando El Mundo Al Reves(世界を逆さに見れば)』以降の楽曲たちだ。

レオのヴォーカルと、カチャのMCが絡み合った、”Mirando El Mundo Al Reves”をきっかけに、バンドの加速度は増していく。”Ona Kasuita”は、読んでそのまま、「お腹すいた」を連呼し、「幸せになりたい」と結ばれる。まだ彼らが「日本に行きたい」と願っていたころに、たまり場となっていたバーでアルバイトをしている女の子に頼んで、歌詞をつけてもらった曲だ。今回の来日で大勢の日本人の前で演奏できたことは、メンバーにとっても相当なものだったろうと察する。

歌詞は、日本語だけではない。バスク語や、ポルトガル語、イタリア語など、実に様々な言語を操っている。以前に、バルセロナで彼らとインタビューをした時の話では、その国の人たちと「友達になりたい」という一心で、曲に歌詞をつけるのだという。

ドラムのショットがダブルに変わり、ベースラインが激しくなれば、同じ早さの曲であっても、勢いは増す。それは、彼らの成功のきっかけをつくったマヌ・チャオが多用する手法だ。緩く、激しくを繰り返し、オーディエンスの内には、着火のタイミングを待つ心構えができてくる。期待や、解放のタイミングを待つ…そうなれば、まんまとチェ・スダカの術中に落ちているということだ。

圧倒するテンションで、いよいよ最後の曲といったところで、冒頭で触れたマイナスのことが起きてしまった。ドラム、ベース、エレキギターを残して、音がまったく出なくなってしまったのだ。皆、一様にあっけにとられたような表情を浮かべ、バンドも同様。だが、音が出ないことを悟るやいなや、楽器を傍らに下ろし(音が出ていたエレキギターもだ)、クリスタルパレステントの中心へと進みだした。メロディラインを生む楽器はひとつもなく、ドラムとベースのリズム隊だけが、ステージに残っている。オーディエンスに手拍子を求め、煽動し、声を張り上げて歌い、今後語りつがれるであろうひとつの伝説を作り上げてしまったのだ。

トラブルからの起死回生は、レオとカチャのフロントマン2人にとって、相当楽しかったのだろう。オーディエンスに身をあずけると、やがて抱え上げられた。テントの真ん中で寄せては返す波の上で、衝撃のライヴを終えたのだった。


写真:中島たくみ 文:西野太生輝
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