闇鍋アフロビート
ナオイートはソロで、ホーン隊は菊池成孔の元で、パーカスのイズポンは(仮)アルバトラスの活動を挟みながら、ついに再び集結したアフロックス。準日本産アフロビートとして、第一線を走る彼らの根幹にあるのは、ニューオリンズやブラジル、キューバといった様々な大陸の匂いだ。アフリカのビートを前面に出しながら、再始動後の新作は、私のみならず、「音」を「音楽」として捉える以前に、すでに触れているはずの、「3・3・7拍子」を取り入れるなど、冒険心はとどまることを知らない。
世界を飛び越え、日本で生まれるごった煮の音は、私を含め、若い世代が間に合わなかったじゃがたらを想起させる。一方で、じゃがたらがフロントマンの強烈なカリスマ性によって一抹の不安定さがあったことに比べれば、アフロックスは、それぞれのテクニックを原始のビートに落とし込んで、うまくまとめあげている。
ドラム、パーカスは同じフレーズ繰り返し、こちらに対し先への心構えをつけさせる。反復こそが原始への第一歩なのだろう。キーボードはリズムの上で軽やかに舞い、ホーン隊が抑揚をつけてくる。ナオイートの声は、かすれた感じが独特な、抑えたもので、煽るといったことはない。煽らなくとも、どうにもじっとしていられない感覚が生まれてくる。
直接火を付けていくのは、ブルースとファンクの境をいったりきたりするギターだったり、レオタード姿で繰りだされるダンスだったりだ。基本に忠実に、時に「盛る」という小技が要所で効いてくるのだ。中盤ともなると、パレスのテントは、完全に彼らの手中に堕ちていた。
ナオイートは熱狂が充満したテントの中、落ち着きはらったMCで、日本のみならず社会そのものをチクリとやる。さすが、キューバを知る者だ。
イズポンが「バイレ!(踊れ!)」といえばコーラスがわき、当然のことながらオーディエンスにも伝搬していく。数度にわたって繰り返され、パレステントをトランス状態へと持っていく。終盤には、”イチカバチカーノ”が炸裂。獣のような踊りが、ステージ下手のスピーカーを転がさんばかりの勢いだ。
世界の音楽が、土鍋に入れられて煮込まれたような音楽。そこには日本の色もしっかりと乗っている。ぜひともフジロッカーズのパレス愛好家だけではなく、多くの人に、そのライヴを体験してほしいものだ。
KINGDOM☆AFROCKS
写真:北村勇祐 文:西野太生輝