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Posted on 2013/07/27 14:10
  • ライブレポート
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青葉市子

息を呑んで耳を傾けたい音

ライブ開始15分前、しっとりと水分を含んだ空気とたくさんの人が木道亭に溢れていた。椅子の置き場の確保に難しい程の人を集めた青葉市子だが、それは前日にピラミッドガーデンに出演したおかげか(勝井祐二 and The Magic Caravan)、最近細野晴臣や小山田圭吾など名だたるミュージシャンと共演しているからか、はたまた彼女の力なのか。3年前のアバロンとは多分何かが違う、そんな雰囲気を感じた。

ステージ上に置かれたアコースティックギターの隣にちょこんと腰掛けるくらいにはパラリパラリと雨が降り始めてきた。「かぶってかぶって。待ってるから。」そうフードをかぶるような仕草をして客席に向けて話しかけると、みんな立ち上がったりしてレインウェアを準備する。レインウェアのカサカサする音、カバンを開ける音、そんな些細な音でさえも演奏が始まるときにはおさまっていて欲しいと思っていたので、彼女の心遣いは私にとって別の意味で嬉しかった。

「ギターの音聞こえる?あんまり聞こえない?」そう言って後ろや左右のお客さんに確認したあと一曲目”レースのむこう”が静かに流れだした。木道亭は他のステージの音が聞こえやすく、この時も遠くの方の音がハッキリとわかったのだが、彼女の透き通った声がすっと響き渡ると不思議とその世界に引き込まれて周りの音が気にならなくなってしまう。木々の間に澄み渡る伸びやかな声、爪弾かれるギターの音色、ふっと吐く彼女の吐息さえも音楽のようだ。

その透き通った美しい声が特徴的な青葉市子だが、サウンドや歌詞に一匙の闇が見え隠れする。それがまた彼女の透明さを際立たせ、魅力を作っているように感じる。「ここでしっかり盛り下げておくので、他でしっかり楽しんでください。」そうやって少し笑って、和やかに曲は進んでいく。ライブ中にかけようと思って忘れてたというカラフルなサングラスを手に持ち「昨日拾ったんですけど、私の、ていう人いない?もらっていいかな?」なんて、ホワンとした空気でお客さんとやりとりをしている。

しかし曲が始まると、誰もがそのすべてを聞き逃すまいとして息をのんで音を立てずにじっと耳をそばだてているのがわかった。緊張で張り詰めているのではない、彼女の奏でる音楽を全身で感じるために息をも殺して聴き入りたい、だからみんなじっとしているのだ。この木道亭が多くの人で埋められていたのは、他の誰の力でもない彼女自身の力によるものだと強く確信した空間だった。

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