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7/24 THU(前夜祭)RED MARQUEE

SPEEDER-X

妖怪変化の激烈ベース&ドラムが前夜祭に見参!

ブラック・キャット・バッパーズやキノコホテルなどが「これはフジロック本編か?」と思わせるほど力の入ったライブを繰り広げた前夜祭。その熱量の上がり切った会場を、ステージ転換時に入るDJ MAMEZUKAのパフォーマンスが観衆を落ち着かせるどころか、さらにヒートアップさせていた。アチチチ。前夜祭からアーティストもフジロッカーも遠慮なしだ。夏の訪れを告げるかのように祝福された音像を投下していくDJ MAMEZUKA。メロウな曲で鮮やかにその場を締めると、今度は前夜祭最後のバンドにして、強烈な“絨毯爆撃機”SPEEDER-X(スピーダー・エックス)の登場だ。

22時45分の開始時刻を少し回ったころ、レッド・マーキーの赤いライトに照らされながら、揃いの白装束にフードをかぶった姿で現れたのは、LOSALIOSの中村達也とRIZEのベーシスト・KenKen。登場の時点で、前夜祭最後に用意された“凶器”感がハンパではない。天才肌の技巧派2人が一分の隙もなくガチンコでぶつかり合う血も涙もない“バトルユニット”は、KenKenのエフェクト・ボイスを合図にデジタル・ノイズのビートに乗せて“フェスティバル開戦”を宣言するバトルへとなだれ込んでいく。

金属的すぎるベースの音塊と重量級のドラムの音圧が、祝祭の到来を心待ちにしていたフジロッカーたちを揺らしていく。とにかく中村達也の1発1発が重い。鉛の弾丸を何発も身体に撃ち込まれているようで、その刺激に観客も歓声を上げていた。ベースの音で“地鳴りのような”という表現はよく聞くが、重力の波動とでもいうべきか、ドラムで“地鳴りのような”と言いたくなる音は初めてだ。

2つめのセッションでは、グリーンの光線が飛び交うなか、“SPEEDER-X”の文字が浮かんだモニターを背にして、削岩機のようなベース・フレーズを繰り出すKenKen。曲の中盤では彼はエフェクターやワウ・ペダルに頼らず、直接ベースのペグを回してチューニングを落としたり上げたりしながら、ドゥーミーな音色を作り出していた。中村も立ち上がって渾身のキメの1発を放つ。

続いて、KenKenの「ロッケンロール!」の叫び声から暴力的なスピードに乗せて、デジタル配合された強靭なロカビリー・サウンドをぶちかましていく。2人のリズム隊による黒いグルーヴに酔いしれる会場。最後にはさらに加速度を増して、マシンガンの撃ち合いのような2人の高速打撃の応酬を見せつけられ、度肝を抜かれた。音楽で死者が出るぞ。

「皆さん楽しんでますか!?フジロック!」とKenKen。「毎回何をやるのか何も決めずに、毎回1発でフリー・ジャムやってます。よかったらまた来てください」とサラッと本人たちは言うが、これだけ濃密でシビアで完成度の高い演奏が即興だということが毎回信じられない。2人の達人が思いつくまま叩き出すフレーズのクオリティ、間合い、音圧…別次元にある音と音の真剣勝負に鳥肌が立つ。「今日はこれで終わるけどさ…まぁ明日からの3日間は怪我だけはすんじゃねぇぞ!」とのKenKenのアツいMCに会場からは大歓声が上がり、ファンキーなベース・ラインに突入。スラップを織り交ぜた変幻自在のビートと音色は、いやもう妖怪変化の類いだよ。スリリングに展開していくビートに、観客は拳を振り上げた。

終盤、過激な音塊の爆撃を受け続けるレッド・マーキーの真ん中あたりで、モッシュやハイタッチが起きた。フジロッカーたちはみんな笑顔、笑顔、笑顔。まだ前夜祭だぞと心配になるが、気持ちは十二分に分かる。仕事じゃなかったら筆者もそこに飛び込んでいたはずだ、間違いない。

SPEEDER-Xは、オアシス・エリアから見えた前夜祭の花火に負けないドデカい大砲を打ち上げた。着火したエンジンが暴発してしまいそうなほど激しいグルーヴの渦は、始まりの夜にふさわしい。前夜祭のステージに登場したアーティストのどれもが、驚くほど充実したキッレキレのパフォーマンスを見せた。今年ヤバいぞ。否が応でも、これから始まる3日間への期待は高まってしまう。

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