FIRST AID KIT
ナチュラル・ボーンな本物
褒めているようで何も言っていない気がするので、なるべく使いたくない形容に”本物の”という常套句があるけれど、初めて見たソダーバーグ姉妹、特にメインボーカルである妹のクララの、何十年も歌い継がれてきたようなメロディと凛とした歌声、そして体の一部のように奏でられるアコースティックギターは本物だった。
ニューアルバム『Stay Gold』にちなんだゴールドのバックドロップにドラムセットまでゴールドというシック&ゴージャスなステージにスタイリッシュな黒い衣装のバンドメンバー2人、そしてゴールドのミニワンピのソダーバーグ姉妹が登場すると、野外フェスとは思えない華やかさが立ち上り、そこここから「可愛い!」の嬌声が。でも、一旦、ギターを手にして正面を見据え歌い始めると、癒し系だなんてとんでもない、むしろクララの伸びやかな高音とヨアンナのクールな低音のハーモニーには迫力すら感じる。オープナーからいきなりアルバムタイトルチューンの”Stay Gold”で沸かしてくれたのだが、バンドメンバーのペダルスティールのサウンドがこれまたイメージを映像的なレベルに拡張してくれる。
2曲演奏し終わると、ヨアンナのMCが日本語、それもカタコト・レベルじゃない上手さで、どよめきが起きる。それは中盤、ボブ・ディランのカバー”コーヒーもう一杯”の前のひとこま。「次はカバーの曲です。ボブ・ディランの曲です。ボブ・ディランの音楽は私たちのインスピレーションです」と、思わず漢字でMCの文字起こしをしたくなる完璧さ。日本という国で初めてのライブを行う嬉しさだけじゃなく、届けたいという真剣な気持ちが伺える場面だったのだ。髪を振り乱してギターを弾くクララには、演奏にもある種のブルースを感じ、ジャック・ホワイトが絶賛するのも無理ないわ、と腑に落ちた。
そのカバーの前に披露した、エキゾチックなイントロが印象的な新作からの”My Silver Lining”も姉妹の力強いハーモニー、ヨアンナのシンセ以外は、アコギ、ペダルスティール、ドラムのみの編成とは思えない、幽玄なムードさえ醸しだしてしまうのは、ひとえにメロディ、音選びに対する勘の良さだろう。
陽気でアッパーなカントリーテイストのナンバーでは、二人揃ってシャウトしたり、お茶目な部分も見せ、姉妹だからこそ通じるユーモアみたいなものも感じさせてくれたり、ライブが進んでいくごとにどんどん新しい表情を見せてくれるのがたまらない。そしてラストは彼女たちの名前をグッと押し上げた”Emmylou”。サビで雲間から西日が照りつけて、ホワイトステージが一瞬、ゴールドの世界に
染まったのはちょっとしたミラクルだった。可愛いより、力強い、に印象が変わり、でも最後の最後にクララの表情がほころんだのを見たとき、心に熱いものが込み上げた。日本で初めてのライブをきっと心の底から楽しんだのだろう。久しぶりに本物のミュージシャンに出会えた喜び。
一度、足を止めた人がほとんどその場を去らなかったのも二人の求心力。特に女性が高揚した声で「良かった!」と感激を表していたのが、ナマFIRST AID KITの実力を物語っていた。
posted on 2014.7.25 16:30
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