児玉奈央
木々と歌に包まれた優しい時間
自然の中で聴くのがとてもしっくりくるアーティストがいる。シンガー・ソングライターの児玉奈央もそんなアーティストの一人だ。彼女がこれから登場する木道亭は、杉林の中をホワイトステージからオレンジコート、ヘブンへと続くボードウォークの中間にある。木々に囲まれた小さな舞台の前では、多くの人が児玉奈央の登場を待っていた。
白いシャツに黒いパンツ、ストローハットという出で立ちで児玉奈央が静かに登場した。バックミミュージシャンはドラムスの菅沼雄太のみ。ゆったりとした空気のなかスタートしたのは“たいふう”だ。優しい歌声に心がほぐれていく。とても優しいのだけれど、まっすぐ前を見つめて歌う児玉奈央の瞳は芯の強さを感じさせる。それが聴き手に心地よい安心感を与えてくれるのかもしれない。軽く挨拶をすると拍手がわき起こり、児玉が微笑んだ。木道亭があたたかい雰囲気に包まれている。木漏れ日のように木々の間をぬって届く彼女の歌声が美しくて、ホッとため息ついてしまう。
ザ・ファイブ・ステアステップスのカバー曲“o-o-h child”でオーディエンスに手拍子を促し、小さな子どもも手を叩いていたのが可愛らしかった。気がつけば、ボードウォークが渋滞するほど木道亭は観客でいっぱいになっている。“ちがうよ”を歌っているときには、彼女の顔に西日が差し、まるで天然のライトアップのようだった。中盤にドラムスとコーラスを担当する菅沼を紹介したあとにゲストが登場した。nabowaのギタリスト景山奏だ。「はなれ目の先輩と一緒に作った曲を歌います」と曲紹介をしてから“Spark”を演奏し始めた。切なさを感じるメロディーに、オーディエンスはゆったりと体を揺らしながら聴き入っていた。
終始ナチュラルな空気感で和ませてくれた児玉奈央のステージは9曲で幕を閉じた。最後に演奏された“きみだけのマジックアワー”では景山がかっこいいギターソロで観客を沸かせる場面も。空っぽになったステージに向かって、「アンコール!」「好きだー!」と観客から声が飛んでいた。あと少し聴いていたい、そう思わせてくれるほど心地よい、木々と歌に包まれた優しい時間だった。
posted on 2014.7.26 16:50
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