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7/26 SATRED MARQUEE

GRANT NICHOLAS

レッドマーキーを吹き抜ける優しい風

本人も参加してのサウンドチェックが長引いているうちに少しずつレッドマーキーに人が集まってきた。聞こえてくるのは美しいアコースティックギターの音色。UKで国民的な人気を誇り、日本でもそしてフジロックでもお馴染みのフィーダーのフロントマン、グラント・ニコラス。彼の日本での初めてのソロライブがこれから始まるのだけど、われわれが知っているフィーダーの疾走感溢れるロックとはどうも趣が違いそうだ。

ファーストソロアルバム『ヨークタウンハイツ』が日本で発売されたのはここ数日のこと。まだ聞いていないオーディエンスがほとんどであろう。それだけに今ここでどんなライブが行われるのか、開演を待つ人々には少し緊張感のようなものが伺える。

そんな中登場したグラントはステージ右側のスタンドマイクの前にギターを抱えて立ち、ちらりとこちらを見て笑顔を見せてくれた。バンドはシンセサイザー、ドラム、ベース/キーボードという編成。そして静かにライブは始まった。

グラントがギターを弾きながら歌い始める。そこにマラカスの音、低いエレクトリックなベース音、鍵盤のメロディが乗っかっていく。飾り気のない最小限の音とグラントの歌声がじんわりとレッドマーキーを支配していく。あぁそうか、このソロプロジェクトは彼の歌を聞くためのものなのだ。

目を閉じ、自分自身に語りかけるように歌うグラントの横顔は照明に赤く照らされてとても美しい。体を揺らすことも出来ずにじっと瞬きをせずに見入ってしまうそんなまばゆさがある。アルバムから“Safe In Place”“Soul Mates”など心地よいメロディの楽曲が披露されるとなんだかレッドマーキーに優しい風が吹き抜けるようなとても穏やかな時間が流れていて、この蒸し返すような暑さもほんのひととき忘れてしまう。

客入りはそう多くなく、数曲聞いて抜けてしまう人も多く見受けられた。きっとその人たちはもっとフィーダーに近いバンドサウンドを期待していたのかもしれないので仕方ないが、個人的には記憶に深く残るとても良いライブだったと思う。グラントの一歌い手としての素晴らしさをもっとたくさんの人に体感してほしい。日本と繋がりの強い彼だけあって早速10月に東名阪ツアーで来日してくれる。またあの優しい風が吹き抜ける穏やかな空間で彼の温かで心に語りかけてくるような歌声に出会える日を楽しみに待とうと思う。

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