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7/26 SATRED MARQUEE

YOKO ONO PLASTIC ONO BAND

愛と平和を叫ぶ、レジェンダリー登場

オノ・ヨーコがフジロックにでるってすごいことだと思うのだけど…。6月のグラストンベリーの模様がyoutubeでも上がっているが、「ドンウォリ、ドンウォリ、ドンウォリ、ドンウォリ…」と叫び続けるオノ・ヨーコのライブパフォーマンスは、奇妙奇天烈で理解され難く、「酷すぎるライブ」としてネット上での反応はとても冷ややかだ。実際、この日のライブ終了後、別のステージにいた人からも、「レッドマーキーから叫び声が聞こえたんだけど…なんなのあれは?」と失笑の嵐。ジョン・レノンと出会い、50年近くも「愛と平和」のメッセージを訴え続けててきた彼女の創作活動は、いつもアバンギャルドで、強くて、まっすぐで、それ故に非難は轟々と飛び交うのだけど、注目はいつだって途切れることはない。

開始10分前に到着すると、すでにステージ前は人だかりができている。これだけの人の内訳は、怖いもの見たさなのか、ヨーコ信者なのか。開始時間が近づくと、どこからともなく拍手が起こり、「ヨーコ」コールが起こる。彼女が登場するとたちまち歓声と拍手が沸き起こっている。蓋を開けてみると、意外なまでの歓迎っぷりに驚いた。

1曲目は重ためのギターリフで始まるロックな”Don’t Stop me”。のっけから叫びだすヨーコに唖然とする人、ノリノリに盛り上がる人と反応は分かれる。バッグバンドには、ネルス・クライン(Wilcoのギタリスト)、小山田圭吾、あらきゆうこ、PIKA☆(あふりらんぽ)、本田ゆか(Cibo Matto)という豪華絢爛な顔ぶれが「WAR IS OVER」のユニフォームを纏っている。そして大野由美子がサポートとして登場し、美しいピアノの音色の”Higa Noboru”。「私はまだここにいる」と意味深い詩も印象的だった。

続く”Open Your Box”では、本田ゆかがバンドの指揮を取るかたちで、曲が進行していく。突飛なまでにも叫び歌うヨーコに合わせる演奏には、次なる展開に息を飲むような緊迫感がある。バッグメンバーひとりひとりにドラムが用意された”O’Wind”では、6人による打楽器のみのリズムにヨーコの歌が乗り、躍動感のある音の結集がアーティスティックな空間を創り上げている。

曲間での「ヨーコ」コールは終始鳴り止まず、ライブは終盤へと向かう。2009年リリースの
『Between My Head And The Sky』収録の”Unun to”。そして曰く付きでいて、ここに居合わせた多くの人が待っていた”Don’t worry kyoko”が演奏されると、ロックの音にまみれたカオスが会場を包み、盛り上がりは絶頂へ向かう。

MCでは「ねぇ、ドンウォリーの話を知ってるでしょ?だからね私、子供がいなくなっちゃったの。それで、何か子供に伝えたいなって思ったの。それで、大丈夫だよキョウコって歌を作ったの。世界中にばらまいたらきっと彼女がリッスンしてくれるって思ったの。ところがねリッスンしてくれなかったらしいのね。」静かなうなずきのような反応が伺える。「あのね、何回やっても結果が出ないことがあるでしょ?失敗しちゃったなって思うでしょ。でも20年たつとちゃんと出てくるかもしれない。わかる?」ここで大歓声と拍手が起こる。「ベッドインだってね、私たちがやってたときはなんであんなもんやって、恥ずかしいじゃないって言われたの。だけど今はほら、みんなわかってくれるでしょ?」再び大歓声と拍手が起こる。

アンコールを求める拍手は鳴りやまず、自慢のメンバーだというネルス・クラインのギタープレイで始まるブルージーな曲で締めくくる。ネルス、小山田それぞれのギターソロとヨーコの叫びが絶妙な掛け合いに聞き入っていると、1時間ほどの演奏はあっという間にラストを迎えた。最後にヨーコが「I Love You!また会いましょうね!」というと、温かな拍手で会場は包まれた。なんて温かいフェスティバルなんだ。ペットボトルを指し「これはただのお水よ」と言い放ちステージを去っていった。1時間に渡るライブで、叫び続けた御歳81歳のオノ・ヨーコは今でも正気で愛のメッセージを発信し続けていることを、証明したかったのだろうか。終演後のレッド・マーキーは、不思議なほど充足感に満ち溢れた空気が漂っていた。

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