はちみつぱい
濃厚なセンチメンタルな旅
サウンドチェックのセッションから、鈴木慶一(Vo/Gt)が「はちみつぱいです」と第一声を発した切り、20分以上に及ぶロングセッションに突入。マイナーチューン、重いグルーヴ、ブルーズの匂い。ムーンライダーズともまた違う、今の時代にアップデートされたインスト・ジャムバンドのぶっとい芯と、百戦錬磨の色気が充満する。雲に隠れない太陽のせいでよりその思いが強くなるのかもしれない。
長い1曲目が終わると、またまた濃厚なサイケデリアが立ち上がる”センチメンタル通り”がプレイされる。印象としてはデッドからシカゴ音響派なども通過してきた重層的なアンサンブルがバンドならではの醍醐味を伝えてくる。
鈴木慶一が本気なのかどうか測りかねるが「こんにちは、45年やってついにヘブンに立った」と話すと、オーディエンスからは拍手と笑いが起こる。ようやくアメリカンロックの滋味を感じるグッドミュージックのニュアンスを”月夜のドライヴ”で醸し、本多信介(Vo/Gt)が歌う”ミスターソウル“が、武川雅寛(Vl/Cho)の吹くトランペットが色を添えて広がる。
トリプルギターにペダルスチール、ベース、鍵盤にバイオリン、そしてツインドラムという大所帯が、40年以上サバイブしてきた曲を演奏するのだから、メンバー個々のミュージシャンとしての円熟や進化も含めて、今聴いても色鮮やかなものになるのは当然といえば当然。それと同時にはちみつぱいならではのラブソングの濃さ、東京という街についての視点を持った歌詞の世界が古くならないことがストレートに素晴らしいと感じる。
慶一さんがメンバー紹介した中でもかしぶち哲郎の息子である橿渕太久磨(Dr)にはひときわ大きな拍手が起こった。連綿と続く音楽の遺伝子をここに見る人も多かっただろう。
“煙草路地”をラストに続いていく音楽の旅を実感させてくれた。胸苦しいほどの音楽愛とロックの魂がそこにあった。
セットリスト
こうもりが飛ぶ頃
センチメンタル通り
月夜のドライヴ
ミスターソウル
塀の上で
ぼくの倖せ
煙草路地