FIELD OF HEAVEN 7/24 SUN TAGS : LIVE REPORT 7/24 SUN FIELD OF HEAVEN

ERNEST RANGLIN & FRIENDS

LIVE REPORT

「レジェンドたちの饗宴」

ホワイト・ステージでロバート・グラスパーを見て、次に始まるベビーメタルに後ろ髪をひかれながら、悩んだ挙句にやって来たフィールド・オブ・ヘブン。超満員のホワイト・ステージに比べるとまだ余裕がある。前方では熱心なファンが柵にかじりついている。待っているのはジャマイカ出身で伝説のギタリスト、アーネスト・ラングリンと仲間たちだ。アーネストはボブ・マーリーより一回り年上で今年84歳。今回でツアーは引退となり、メンバーにはラストにふさわしい大物が世界中から集結しているので、見逃すわけにはいかない。まさかワールドミュージックのレジェンドと、ベビメタが被って悩むとはフジロックならでは、なんて楽しい悩みだろう。

ドラマーはナイジェリア出身のトニー・アレン。フェラ・クティと彼のバンド「AFRICA 70」のリーダー&ドラマーだったトニーは76歳にしてフジロックに初出演となりアーネストを支える。思ったより、リラックスした感じで演奏が始まると、レジェンドたちを少しでも近くでも見ようとする観客でステージ前が一気に埋まった。基本的には裏打ちのルーツ・レゲエで、そこにジャズとアフロビートの要素を散りばめたトロピカルな音楽がヘブンを包む。高齢のアーネストとトニーが苗場まで来れるのか不安だったが、心配した自分が恥ずかしくなるほど2人は元気だ。やさしい校長先生のようなアーネストは丁寧なソロを弾きまくる。トニーはまるで太極拳の達人の如く背筋を伸ばし、無駄のない動きで、ルーツレゲエのワンドロップ・スタイルではなく、アフロビート的にうねりを生み出していた。直前に見た為どうしても比較してしまうが、ロバート・グラスパーが黒人音楽を最新の方法で調理した革新的なスープだとすると、こちらは環大西洋の音楽を70年間煮込んだスープの味わいを感じる。

そして、レジェンド2人を囲むメンバーからも目が離せない。巨体に長いドレッドを揺らし観客をあおり、一際目立つジャマイカ系イギリス人はコートニー・パイン。ルーツであるカリブ海や、世界の音楽をジャズに取り入れているサックス奏者だ。雨が降り出したときには「雨に歌えば」のメロディーをソロに入れるなど、サックスと電子サックスを豪快に吹きまくった。アーネストとトニーが共演するアルバム『Modern Answers To Old Problems』から、自身がゲスト参加しているアフロビートジャズ”INFLIGHT”なども演奏した。セネガル出身のシェイク・ローは現在のアフリカ音楽をリードする巨人だ。富山県で行われているワールドミュージックの祭典「SUKIYAKI MEETS THE WORLD」に昨年出演し、全能感溢れるパフォーマンスが忘れられない。しかし今回は、隅っこでティンバレスを叩き、ギターで自身の最新作から”Balbalou”を歌い、ドラムを交代して叩きながらもう1曲歌ったが、コートニーとは対照的に終始控えめな印象で、大先輩たちに敬意を払っているような姿がとてもキュートだった。

スウェーデン出身のジャズミュージシャン、ウッドベースのアイラ・コールマンと、今回のメンバーでは最年少でキーボードのアレックス・ウィルソンの二人はソロもあまりなく、バッキングに徹して土台を支えていた。途中のMCでアレックスは「レジェンドたちと共演できて光栄だ!」と言いながらメンバーを紹介した。きっとその気持ちはメンバーのみんなが感じていたことだろう。
ライブ中盤、マーク・エルネストゥス・ンダッガ・リズム・フォースの女性ダンサーが登場し、見事なアフリカン・ダンスを披露し盛り上がりは最高潮に達し、最後にはアンコールにまで応え、皆で肩を組んで挨拶をして大団円を迎えた。
アーネスト・ラングリン先生、長い間お疲れ様でした! そしてトニー・アレン師匠は……またのお越しをお待ちしております!

セットリスト(原文のまま)
MOONDANCE
SWAZILAND
9:58
BELOW THE BASSLINE
BALBALOU
SURFIN’
SUZANAH
NANA’S CHALK PIPE
KING TUBBY

Text by 伊部勝俊(寄稿) Posted on 2016.7.24 23:53