Nao Kawamura
音楽や仲間へ、喜びがあふれた夜
「Nao Kawamuraです。今日は名前を覚えて帰ってね」と現れたのは弱冠24歳の女性シンガー。Suchmos、SANABAGUN.やFIVE NEW OLDの楽曲に参加するなど、近年のシーンには欠かせない存在となりつつあるのはご存知だろうか。すらりとしなやかな体、ひとつにまとめた長い黒髪が印象的。今日はギター、ベース、ドラムに加え、キーボード、コーラス、トランペットとにぎやかな編成での演奏だ。
パリッとしたトランペットとの掛け合いが印象的な“Paradiso”から始まり、“Unrelievedly”では細い体をダイナミックに動かしながらリズムにのりはじめる。ややハスキーに歌うのだけれど、低音と高音を巧みに行き来する様子は、バンドとはまた違ったシンガーとしての実力がしっかり感じられる。さらに指の先や、発する声が出るか出ないかギリギリの部分まで神経が行き渡っていて、丁寧で計算しつくされている様子も伺える。
ジャジーなナンバーが多い一方、“Curiosity”のようにSuchmosに近い、アーバンな音作りのある楽曲も(しかも、今回の編成にはSuchmosのTAIHEIが参加)。サビで力を一気に解放し、声量・パフォーマンスともにぐっと迫ってくる瞬間は、もう目の前にいる彼女の音しか考えられなくなって、次第に魅了されていく。多くの観客もゆらゆらと、心地よくゆれはじめた。
最後はキーボード・澤近立景と2人になって“泣けない女”を披露。日本語詞になるとよりしっとりとして、雰囲気が変わるのも新たな発見だ。演奏が終わると、澤近と抱擁してステージを去る。ここまで共にしてきたバンドメンバーや友人への感謝もまた丁寧。彼女のことはよく知らない観客も、一緒に今日の喜びを分かち合えるステージであった。