Explosions In The Sky
轟音が生み出したカタルシス
ホワイト・ステージに奇跡が起こった。そう思えたライブがあった。見た人はもう周知の事実かも知れない。エクスブロージョンズ・イン・ザ・スカイ。あれは奇跡のようなライブだった。寒さが出てきた時間帯、夜の20時、定刻通りに現れた5人。クリス・ラスキー、マイケル・ジェイムス、マナフ・ラヤニ、マーク・T・スミス、そしてサポートメンバー。彼らの演奏に魅入ってしまった観客全てに感動をもたらした。
「こんばんは、私たちはエクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイです。元気ですか?」とマナフがカタコトでMCをする。観客たちはおのおの返事をするがマナフは「私は日本語話せません」とまたカタコトで返す。観客は笑う。今から思えば最初はこんな和やかなムードからはじまったのだが、それは本当に最初だけだった。
スモークが大量に立ち昇って行く。ステージ側からのオレンジの照明が当てられる。オレンジの煙が燃えているようにも、雲のようにも見える。そこに躍動する5人の演奏者たちの影。音や動きに連動してフラッシュがたかれるが、スモークのおかげで積乱雲が雷を起こしてるかのように見えてくる。とても美しい。透明感のある旋律とダイナミクスのある鼓動が、全てを覆い尽くすような強烈な轟音が、このホワイト・ステージにいる観客全てを包み込む。
気づけばオレンジの煙は紫に変わっていた。時間を奪われるような感覚で消化されていくセットリスト。しかしなぜエクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイのライブはこんなにも感動的なのだろうか。インストゥルメンタルなので歌詞での意味や情景を明確にするということができない。しかしそれでも伝わるものがある。叙情的なアルペジオ、鬱積していく何かを感じるトレモロ、それを解放するかのような爆発する轟音、そして緩やかな安らぎの静の表現。この音楽的な要素とステージ上の躍動する人影が合わさってエモーショナルで感動的な表現にたどり着くのかもしれない。
気づけば最後の曲だった。”The Only Moment We Were Alone”が演奏された。本当に凄まじかった。時間的にグリーン・ステージのレッチリ観たさに途中で抜ける客は少なくなかったが、このラストを観れなかったことは大損したと言っても過言ではない。
静の部分から緩やかに動に移行する。切ないアルペジオが響き渡る。轟音にたどり着くまでの道程がとても美しい。ラストの演出は鳥肌モノだった。最後の音でブレイクするとともに全ての照明が消えホワイト・ステージは暗闇に。瞬間、大歓声の渦が発生。鳴り止まない拍手。
しばらくするとまた照明がついてマナフが「ありがとう。ありがとう。ありがとう。おやすみ。」とまたカタコトでのMC。
今度はさほど笑いはない。観客の方がまだそこまで気持ちを切り替えられないのだ。私も早く記事にしなければいけないと足早に去る中まだステージを見つめている人がたくさんいた。その中の数人は涙ぐんでいたが全く違和感がなかった。同じもの観た人間として、それで涙ぐんでしまっていることはあり得る範疇なのだ。そう思わせるほどのライブだった。
エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ。彼らには再び苗場の地に帰ってきてほしいものだ。
セットリスト(原文のまま)
Catastrophe and the Cure
The Ecstatics
The Birth and Death of the Day
Colors in Space
Your Hand in Mine
Disintegration Anxiety
The Only Moment We Were Alone