VIDEOTAPEMUSIC × cero
「踊れる映画館」には刺激がいっぱい
VIDEOTAPEMUSICをVJとして迎えるのとはワケが違う。ceroとVIDEOTAPEMUSIC双方の曲を映像を加えた一つのセットで表現するとはどういうことか?結果的にceroのサポートメンバーを含む音楽的筋力と、お互いのセンスの共振具合をたっぷり楽しめる「踊れる映画館」が最終日のレッドマーキー名物のSUNDAY SESSIONで実現した。
グリーンで電気グルーヴも始まるという時間帯に多くのオーディエンスがレッドに流入してくる。スクリーンに2アーティストの名前が映し出される様は一本の映画の様だ。映像は50sのアメリカ映画に良くあるドライブイン・シアターの映像。車で移動と言えば…1曲めは”Summer Soul”を惜しげもなく投入。高城晶平(Vo/Gt/Fl)の歌唱はますます力強さを増している。ドライブの映像もVIDEOTAPEMUSIC(以下、VIDEOくん)の感性で選ばれた絶妙に懐かしくもアーバンなもので、映像と融合して新しい”Summer Soul”が立ち上がる。
VIDEOくんの選ぶ昭和の若者群像のような映像や、古のお洒落な黒人たちのパーティシーンなど、一見脈絡がないようで二組の音楽の底に流れるものとシンクロする。ユニークだったのがゴジラ映画なのか、昭和の東京が破壊される映像が不思議と”Elephant Ghost”にフィットしていた点。ますますポリリズム的なアンサンブルをバンドが構築しているのが心地よくツボに入る。
映画の演奏シーンのエディットがユーモラスで、そこにceroが演奏をつけていくアプローチも新鮮な”Sultry Night Slow(大停電の夜に)”で、踊る映画館どころかここが何年のどこの国かも怪しくなってしまった。なんという酩酊感。これはVIDEOくんの映像があってこそ成立する世界だろう。
高城が「フジロック3日目、そろそろ終わりですがぶっちぎりで行きましょう!」とさらに煽ると都市の景観が映し出されて”わたしのすがた”が叙情味とここにいる全員で夜を越えていくようなある種の連帯感を生んでいく。映像に演奏をつけるというのとも、演奏にVJが付いているのとも違う。特に映画に寄せて演奏を新たにアレンジしたもの、つまりVIDEOくんの曲へのアプローチとceroの人気曲のつながりが自然だった。
メンバー紹介をした後には先日、動画が配信された共作”ベルリンブルー(reprise)”で約1時間の”映画”の幕を閉じたのだった。ceroの持つ物語性やエキゾチックなものの消化がVIDEOTAPEMUSICの手法と眩いコラボレーションを実現した貴重な時間。今年のアクトの中でも白眉だと思う。
セットリスト
Summer Soul (Slumber)
チャイナブルー新館
Yellow Magus
Kung-Fu Mambo
Elephant Ghost
わたしのすがた
Sultry Night Slow(大停電の夜に)
Contemporary Tokyo Cruise
ベルリンブルー(reprise)