Suchmos
自分らしく生きる、ディス・イヤーズ・モデル
この日iTunesチャートをチェックしてみるとで新作『MINT CONDITION』とアルバム『THE BAY』の2枚がトップ10入りしているという事実。逆に2nd EP『LOVE & VICE』は購入済みということか。ちなみに上位はSKY-HIや乃木坂46、西野カナという布陣の中にあって、だ。痛快極まりない。そんな中、一昨年のルーキーからゲートをくぐりホワイトステージに進出するバンドの気持ちはいかばかりか。
入場規制がかかるんじゃないかと早々に前方へ陣取ったが、入念なサウンドチェックをする様子に徐々にオーディエンスが集まってくる。YONCEの名前を呼ぶファン、そして様子見なリスナーが取り囲むといった感じだ。だが、メンバー登場時の歓声は大きく、YONCEの登場にいたっては大方の男子諸君の「負けたわー」という心の声が聴こえた気がした(飽くまで主観なのでお許しを)。
憎いことに「Blow Your Mind」のセッションからニューEPのインスト「S.G.S.3」へと。HSU(Bs)のローが最高だ。やはりSuchmosを見るのにホワイトは最高の環境だと納得する。「ピース!神奈川県の海沿いからいい波持ってきたぜ!」と波のアクションで緩やかなグルーヴを促すYONCEの新しいポップスター像。そしてKCEE(Dj)のスクラッチからおなじみセクシーな「YMM」になだれ込むとさらに横ノリのうねりが波及していく。いやもうくどいけれど「ホワイトはSuchmosを待ってたぜ!」というはまり具合だ。
「最高だね!この景色を見たかった。最高のフェスだぜ」と笑顔を見せるYONCEに様子見だったオーディエンスも巻き込まれている。ピアノリフがジャジーな「Get Lady」、KCEEのターンテーブルさばきが冴える新曲「JET COAST」と、圧倒的に音数を絞り込んだSuchmosのソウル/ファンク、レアグルーヴのストイシズムの美。研鑽なんて言葉は似合わない気もするが、メンバーが磨いてきたアンサンブルはこの6人にしか作れない、人間性を含めたアンサンブルだ。
太陽が容赦なく照りつける中、さらに増えていくオーディエンスに向けて、「今日みんな徘徊したと思うけど」というMCにこの次に演奏される曲を予想しそこここで歓声が上がる中、さらに「3日間徘徊し続けると思うけど、応援します。”MINT”っていう曲、聴いて」と、目下の最新曲をさらに削ぎ落としたビートで最大限の情景を描いていく。日本語詞で仲間の存在や地元を思わせる彼らにとっての原点と言えそうなこの曲。孤独な夜があっていい、歩けさえすればいいと歌いつつ、兄弟、徘徊しないかい?と呼びかけるある種、Suchmosのアンセムだ。セクシーで踊れる曲以外で聴き手をロックしたこの曲の頼もしさがフジロックというあらゆるオーディエンスがいる場所で確信に変わった。
終盤にはTAIKING(Gt)がアラビックなリフを弾くロック的なナンバーで新曲だという「A.G.I.T(アジト)」も披露。生音で作るブリープテクノ風な音像もあり、アブストラクトな新機軸に嬉しい驚きも。そして最高のベースラインの「DUMBO」では、TAIKINGがステージ前方に出てきてアグレッシヴなプレイも見せた。
ここまで来てようやくアディダスのジャージを脱いだYONCE。美学なんだろうか。忘れるほど楽しかったのだろうか。
「ここにいるすべての人が悠々自適に生きていけますように」と願いを込めてラストは緩やかなグルーヴの「Life Easy」。自分らしく生きることについて歌う彼らはクールでトレンディな存在に必然的に時代によって押し上げられたけれど、ルーツを音楽家として学ぶスタンスが明確にあることがこの日の演奏ではっきりした。
深々とお辞儀をしたあと、ステージ上でメンバー同士でハグしていた6人はこのステージに並々ならぬ思い入れで臨んだことは明らかだ。ヴィジョンに映し出されたYONCEが泣いているように見えたのは気のせいか、どうだったんだろう。
セットリスト
S.G.S 3(インストゥル メンタル)
Pacific
YMM
Get Lady
JET COAST
MINT
A.G.I.T
DUMBO
Life Easy