TRASHCAN SINATRAS
清涼感あふれる昼下がりのステージ
通称トラキャンで親しまれるスコットランドのトラッシュキャン・シナトラズが2009年のフジロック出演来、7年ぶりに苗場の地に帰って来た。しかも、素晴らしい新譜『Wild Pendulum』を引っ提げて。良い天気に恵まれて、汗ばむ陽気な今日の苗場。しょっぱなにラ・ゴッサ・ソルダの激アツなステージを観た後だったこともあり、ここらでちょうどクールダウンしたいなと感じていたところへ、このバンド。清涼感たっぷりのステージで癒してくれた。
開演時間にフッとステージが暗転し、ゆったりとバンド一同登場してフロントマンのフランシス・リーダーが「Everybody, OK!?スコットランドから来たトラッシュキャン・シナトラです。はじめていいかい?」と紳士らしく振る舞い、爽やかなギターフレーズを奏ではじめた。”Best Days on Earth”だ。バックのスクリーンにはその音像とぴったりな白い鳥と夕方の空が映し出され、ビートが入るとフロアが一斉に揺れはじめる。それにしても、オーディエンスは何て幸せそうな笑顔を浮かべているんだろう。曲のタイトルまんまじゃないか。思わず「あぁ、今年もフジロックがはじまったんだなぁ」という感慨にひたってしまった。
2曲目の”All The Dark Horses”の入りの出音がおかしくなり、ジョン・ダグラスのギターのチューニングをすべく、一旦中断。すかさずフランシスが「スコットランドのじゃなく、アメリカのギターを買うべきだな」と冗談を飛ばす。続く”Hayfever”においてはリズム取りが随所でちょっと調子っぱずれになる。でもそんな気負わないところがスコティッシュ・バンドらしいご愛嬌で微笑ましい。
中盤で演奏されたのが、新譜『Wild Pendulum』の中で一番好きな曲、”Ain’t That Something”だ。限りなくキャッチーだが、裏にノイズが散りばめられていて甘美な陶酔感に襲われる。こんな絶妙な毒っけを含む佳曲はトラキャンにしか作れないんじゃないだろうか。続く”Send For Henny”の後、またしてもチューニングのお時間。やっぱりスコットランドのギターはいまひとつなのだろうか(笑)。
フランシスがアコギから聴き覚えのある軽快なフレーズを放つ。それがデビューアルバムにして名盤『Cake』からの”Only Tongue Can Tell”とわかると、フロアは大歓声でもって打ち返した。その後も爽やかな佳曲の連打が続く。全体に涼しさが漂う軽快な”Let Me Inside (Or Let Me Out)”、キラキラした趣きのキーボードの冒頭の入りが何とも可愛らしい”The Family Way”、かつて一緒にツアーを回ったこともあるサニーデイ・サービスのような哀愁感あるギターがたまらない”Weightlifting”を披露した。寡黙に音を紡ぎ続けるバンドに対し、フロアは揺れつつも真剣な眼差しで聴き入っていた。
スペシャルゲストとしてトランペット奏者の2名が参加し、続く”What’s Inside the Box?”と”I’ve Seen Everything”で優しいメロディを奏で、曲に華を添えた。そして、最後はやっぱりこの曲、名曲”Obscurity Knocks”だ。終盤でキーボードのメンバーがタンバリンをシャンシャン鳴らしながらステージ前に出てきた(でも遠慮して端の方にいた)のが可愛かったなぁ。何ともシャイな感じで。爽やかな音のシャワーを浴びまくり、胸のうちがスーッとするような心地よいライヴだった。
-Setlist-
Best Days on Earth
All The Dark Horses
Hayfever
Iceberg/Autumn
Ain’t That Something
Send For Henny
Only Tongue Can Tell
Let Me Inside (Or Let Me Out)
The Family Way
Weightlifting
I’ve Seen Everything
What’s Inside the Box?
Obscurity Knocks