在日ファンク
おまえの言葉でファンクを歌え。
ニューアルバム『レインボー』にちなみ七色のカラフルなスーツに身を包んだメンバーが入念なサウンドチェクをする頃には、ぱつんぱつんになってきたホワイトステージ。なぜか浜野謙太(Vo、以下ハマケン)は外国人も多いオーディエンスを意識してか終始カタコトの英語でMCを続ける。「ウィ・アー・在日ファンク、アフター・テン・ミニッツ、カミング・スーン!」といった具合に…。
しかししかし登場するや抑えめのホーンアレンジが大人な”爆弾こわい”で、高祖ジェイムス・ブラウンの亜種とはもはや言えない、ハマケン・オリジナルのキレッキレのダンスを披露する。そのままちょっと懐かしい”ダンボール肉まん”と続く。なかなかポリティカルな出だしではないか。ポップソングはいかようにも社会的なことを身軽に歌えるのだ。楽しいぞ。
「在日ファンク・ミーンズ、ファンク・イズ・ジャパーン!」ともはや気持ちしか伝わらない(それで十分なのだが)英語MCが執拗に続く。もはやこれはハマケンの意志であり、同時にエンタテイメントだ。そして黒人のようにエロい歌を作ればいいと言われたができない。それはなぜか?の「それはなぜか?」をオーディエンスにリフレインさせる。この段階で英語MCはすでにあっさり断念されていることにお気づきだろうか。確かに少し難易度が高い。そしてなぜ、エロい歌詞を作らないかと言えば、「在日ファンクだからだ!」という結論。いや、その割に「君のマルから子供が生まれそう」とか歌ってますが!
ゲスト・パーカッショニストも入ってますますループ状のファンク・グルーヴが強化され、『男はつらいよ』の車寅次郎の口上を真似するハマケン。追分風のアレンジでそのまま原曲を歌ってくれた。そのままメンバー全員が鳴り物を鳴らしたり振ったりして絶妙なシンコペーションを作り出し、”むくみ”と題された呪文のようなナンバーへ。早口で「むくみむくみむくみむくみ」と繰り返すだけで不思議な祈祷のようなムードが可笑しみとともに作られる。その間も曲ごとに様々な振り付けで歌いおどるハマケン。仰木亮彦(Gt)が自分のポジションに出てこようもんなら、手で仰木の足跡を払う細かさだ。
ファンクが、JBが好きでたまらないけど、何を歌ったもんだろうかというのが日本のファンク好きでオリジナルをやろうとする自覚的なバンドの悩みの種だろう。そこをあくまで自分の日常から掬い取り、意味を持たせすぎず、しかしすぐ覚えられるトピックを盛り込む在日ファンクの手法はついにスタイルを確立しつつあるように見えた。
ラストはニューアルバムからリードトラック”それぞれのうた”がタイトなビートとメロウネスをまとった演奏で届けられた。結成9年、初出演にしてホワイトステージを揺らし、微妙な笑いも巻き起こして彼らにしか鳴らせないファンクの姿を実感させてくれたのだった。
セットリスト
SUPER BAD
爆弾こわい
ダンボール肉まん
マルマルファンク
京都
縁の下の力持ち
男はつらいよ
むくみ
ぬるまゆファンク
それぞれのうた