G.LOVE&SPECIAL SAUCE
ブルーズを更新し続ける男たち
フジロック2日目、早くも17時をまわり、陽が落ちはじめ肌寒くなって来る。空が紅く映えだす美しい時間帯のヘブンに登場するのは、ジー・ラヴ・アンド・スペシャル・ソースだ。フィラデルフィア出身のGラヴことギャレット・ダットン率いる「ラグ・モップ」というヒップホップ(ラップ)とブルーズを融合させた音楽スタイルを確立させたバンドで、90年代初頭から現在にいたるまで最前線で活躍している。フジロックは5年ぶりの出演だ。
開演時刻にギャレットを筆頭にオリジナル・メンバーのジミー・プレスコット(ベース)とジェフリー・”ハウスマン”・クレメンス(ドラムス)がステージに姿を見せた。ギャレットが「ピースサインを掲げてくれ!」とオーディエンスに促し、首にかけたブルーズ・ハープをいなたく吹かし”Peace, Love and Happiness”でステージをキックオフさせた。苗場の山々に囲まれピースフルな空気が漂うヘブンにぴったりの曲だ。三人が織りなすセッションはやはりタイト。ジミーが弾くウッドベースの重たい調べの上をギャレットがリヴァーブをきかせた楽しいリフを刻む。続く”Sugar”や”Nite Life”では、メンバーそれぞれのアドリブで披露するソロ・パートがあり、他の二人はソロの見せ場が際立つよう出力を調整して絶妙なサポート役に徹しているのだ。三人の関係性の良さを思わずにはいられない。
初期の名曲”Cold Beverage”でギャレット十八番のラグ・モップが炸裂する。ハウスマンが叩き出すアフリカンなパーカッションが醸成するグルーヴの上を滑らかに流れるギャレットのラップ。曲の随所で入るブルーズ・ハープの音がブルーズの質感を確かなものにしている。この曲間に「フジロック!20イヤーズ・オブ・ピース&ラブ!」と愛情たっぷりにフジロックの20周年を祝ってくれたのだ。
個人的なハイライトは、新譜『Love Saves the Day』からの激渋なブルーズロックンロールナンバー”Dis Song”だ。ギターのシンプルだが力強く深みのあるリフ、リフが刻まれるリズムとテンポ、高らかに荒れ狂うブルーズ・ハープを入れるアレンジと構成、そのすべてが最高だった。男女間の苦労話の語りを入れてくる辺りが、何ともブルーズで思わずにんまりとしてしまう。お父さんに肩車をしてもらっていた小さい女の子がこの曲で「キャッキャ」と嬉しそうにリズムにのって揺れていたのが忘れられない。それにしても、この齢でフジロックを体験し、極上の音楽を存分に浴びることができるなんて、うらやましい限りだ。老若男女問わず、ライヴ・ミュージックを楽しめるフェスティヴァルという環境、文化を日本で創り上げたことこそが、フジロック最大の貢献と言っていいだろう。
ラストでスライドギターが暴れまわる”Nothing Else Quite Like Home”で大騒ぎし大団円を迎えた。彼らは明日、パレス・オブ・ワンダーのクリスタル・パレス・テントに登場予定だ。富士祭電子瓦版のインタビューによると、ギャレット曰く今日のライヴとは「全く違う内容のライヴになると思うよ」とのこと。今日のライヴを観た人も観ていない人も、全員23時45分にパレスに集合だ!
セットリスト(原文のまま)
PEACE LOVE HAPPINES
SUGER
SHOT GUN
I-76
LOVE
Weekend Dance
Sweet Suger
Numbers
Come Up Man
RAINBOW
Nothing Else Quite Like Home