TORTOISE
一流シェフvs違いのわかる客
2日目、20:10からここホワイト・ステージにてポストロック界の最重要バンド・トータスの出番だ。グリーン・ステージの動線が相当混雑していて開始時間に間に合うか不安だったがなんとか開演前にたどり着いた。そこで見たものはトータスの観客の数だ。正直に言ってフジロックの客層はトータスといえどホワイト・ステージは埋まらないのであろうと思っていた。なぜならグリーン・ステージはベックが行われている。しかし着いてみるとかなりの数の客が。トータスへの期待の高さが伺えた。
ステージ上にはドラムが2台向き合うようにセットされていて、もうこれだけで楽しみだなと、思わずそう感じてしまった。
時刻になるとメンバーが登場。早速演奏に取り掛かる。シンセのロングトーン。図太いビート。各々の楽器を華麗に操りアンサンブルを組み上げていく。緻密なのか、直感的な大胆さなのかはわからないが心地よいリフが挟まれる。これぞポストロック。何が言いたいかと言うと、ポストロックという言葉は包括的なもので細かく細分化されたりした場合に使われる言葉ではない。だがトータスこその曖昧な表現が生きるバンドだと思うということだ。なぜなら曲によって変わるパート、時にはツインドラム。計算されたフレーズ。音響的アプローチ。どれかに固執されてるわけじゃなく常に様々な角度から音楽と向き合ってきて自分たちをアジャストし続けた結果が今の形なのだが、それをひとくくりに表現するには抽象的で包括的な言葉でしかないと思う。彼らのキャリアがそうさせている。
ライブが進んでいく上で気づいたことは、年齢的なものもあると思うが落ち着き方がやはりベテランの域に達していると感じた。淡々とこなしていくのだがいい加減なやり方には感じない。リラックスして演奏しているように思える。
後半まできて感じたのは今回のライブ、想定以上に踊れる構成に仕上がっているということだ。観客も楽しんで体を揺らしているのがよくわかる。こんな考え方は良くないのかもしれないけれど、ここにきている観客は音楽の楽しみ方を心得ているかのように感じてしまった。そう見受けられるのが歓声のタイミングだったり体の揺らし方だったりが玄人好みといった感じだ。ここの観客はトータスに求めてるものが純粋な音楽の良さであって、ロックスター的な格好良さを求めてはいない。トータスという一流シェフは、違いのわかる観客に極上の味の音楽を提供して観客の舌鼓を打たせてる、そのように感じた。いやもうなんか形容するのもいい加減違う。率直に、とにかく素晴らしいライブだった。
セットリスト(原文のまま)
High Class Slim Came Floatin’ In
The Catastrophist
Shake Hands With Danger
Prepare Your Coffin
Gesceap
Yonder Blue
Monica
In Sarah, Mencken, Christ, and Beethoven There Were Women and Men
Eros
Ten Day Interval
Swung From The Gutter
At Odds With Logic