羊文学
大人ではない。でも、子どもでもない。羊文学の見せた圧巻のライブ!
お揃いの白い衣装に緊張した面持ちで登場した、羊文学の3人。90度に深々と揃って挨拶する姿は、今からピアノの発表会が始まるよう。
はいじ(Vo&Gt)のギターがゆっくりとかき鳴らされ、最初に演奏されるは、”春”。
透き通るような歌声は、ほんの一瞬にして観客を引き込んでいく。「羊文学」というバンド名からも、まだ未成年である彼女達の初々しい雰囲気からも想像できないほど、重いサウンドにはいじの柔らかな声質がぴったりとはまっている。こんなのズルいよ。正統な女性ボーカルのバンドでありながら、歪む轟音と演奏の力強さはどうしたって見入ってしまう。先程まで、どこにでもいるような大学生だったのに、緊張をおくびにも出さず堂々と演奏する姿は、流石としかいいようがない。
更に、原曲とは異なるアレンジで聴かせてくれるのも嬉しい。特にふっくー(Dr)のスケール感やアレンジ力は、これから彼の持つ技術がどのように活かされていくのか期待したくなるほど。衝撃的すぎるインパクトに、観客からは拍手と歓声が上がる。
2曲目は、”うねり”。先程の”春”とはうってかわって、力強く歌いあげるはいじ。あなたは女性特有のたくましさを感じさせるような、こんな歌い方も出来るのか。
曲名通りにうねるわあこ(Ba)のベース。まさか、こんな音を女の子が指引きで出すなんて思いもしなかった。
「大人になれない」「子供にも戻れない」という歌詞が耳に残る。大人ではない。でも決して子供でもない。自分達の存在をしっかり表す言葉が存在しない、そんな微妙な年齢である彼女達しか歌うことのできない歌だったように思う。
最後の曲では、跳ねるように飛ぶように、ステージ上を自由に動き回るはいじとわあこ。映画のエンドロールのような力強さは、目の前のか細い女の子たちが奏でる音だとは思えない。
大喝采の中、ピックを投げるはいじ。まだ不慣れなのか、すぐそこで待ち構えている観客にまで届かせることができず、恥ずかしがりながら可愛らしく笑う姿が微笑ましい。表情や仕草は、まだまだ子供なのになあ。演奏はまだまだな部分も見られたが、言葉では説明できない人を魅了するものを沢山持っている。これから経験を積み、確実に知名度を上げていくであろう彼女達。この節目の年となるルーキー・ア・ゴーゴーで目撃できたことを、とても誇らしく思う日が来るはずだと思う。