FUJIROCK EXPRESS '21

MOREFUNAREA REPORT8/21 SAT

私が見たフジロック(Day 2)from スタッフM

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Photo by suguta Text by 三浦孝文

Posted on 2021.8.22 18:35

可能性に満ちあふれたフジロックという場

私が2日目に観たライヴは、個人的な諸事情により、取材したヘブンでの光風&GREEN MASSIVEと、元ちとせをスペシャルゲストとして迎えたスカフレイムスの2本のみ。残念なところはもちろんあるが、人生では色々なことが起きる。欲しくないことだって起きる。このコロナ禍だってそうだ。起きたことに合わせてダンスし、そこから楽しんでいくしかない。ということで、家族や仲間たちの目も借りて、彼らから得た話を盛り込みながら、二日目を振り返っていきたい。

 私の母がこの日のベストアクトだと言っていたSIRUP。グリーンステージから流れてきた心地よいR&B/ソウルが素晴らしく、前情報がまったくない状態だったがその音と歌声に誘われてそのままラストまで観てしまったそうだ。彼は、フジロック開催の直前に「フジロック出演にあたって ご一読頂ければ幸いです!」とフジロック出演に対する考えを真っ直ぐな言葉とともに表明していた。今年のフジロックでは多くのアーティストたちがステージ上で自分たちなりの考えを示していたが、その流れのきっかけを作ったのが彼だと感じている。ステージでは、立場的に弱者の人たちに対する想いなど、彼自身が日々感じていること、実際に行動していることを音楽を通して語り、先の表明のラストにある「大変な世の中ですが、皆様ぜひご自分を大切にしてください」、自分を大切にすることが、他人を大切にすることにつながるということ、その本物の言葉が胸に響きめちゃめちゃ感動したとの感想を母は語ってくれた。

 Corneliusのキャンセルにより、急遽出演が決定したKen Yokoyama。期間中に場外のスワロー苗場ロッジで開催された【Joe’s Garage Naeba presents “芸術衝突”】というジョー・ストラマー展に立ち寄った際に、横山健がステージ上で語ったという激アツな内容を聴いた。「どうしたらいいか分からない時、僕は心のジョー・ストラマーに聞くんです。だけど今回ばかりはジョーもどうしたらいいか分からないって。でも、ステージに上がったらブチかませ。できるだけ激しくな!」と。熱い、熱すぎる!ジョー・ストラマーはご存じの通り、フジロックを愛し、日本にフェスティヴァルの楽しみ方を文化を教えてくれた、フジロックに欠かせない存在であり精神だ。彼の心の中のジョーが言う通り、正しい答えなんてないのだろう。自分で考え、自分なりの答えを出し、行動を選択していくしかないのだろう。この話には本当に力づけられたし、勇気づけられた。

 そして、この日のグリーンステージのトリを務めたのがKing Gnu。こちらは我が弟から話を聞いた。バンドの鬼気迫る演奏も凄かったが、井口理の歌、特に”The hole”での祈りのような感極まる表現に圧倒されたとのこと。「すごくおこがましいかもしれないけど、少しでも明日を笑顔で生きられる力になれたらいいなと。そういう思いで立てたらいいなという気持ちで今日ここに立っています」と涙ながらに想いを伝え、場が感動に包まれたそうだ。バンドの創始者でリーダーの常田大希も「正解は誰にもわからないけれど、家族や仲間のことを考えて行動することがコロナに打ち勝ったり、より良い未来につながる」と自信の考えを表明した。

 今回のフジロックでは、上記に限らず多くのアーティストが自分なりの見解や考えを示している。コロナ禍に起因した現象であることは間違いないが、良い傾向ではないだろうか。自分が思うこと、感じることを表して、その上で選択し行動していく。選択した自分の責任にもとづいて。アーティストによる自由な表現や、苦悩も含んだ彼らなりの考えを我々日本全国のフジロッカーが聞いたのだ。これは大きなことだ。フジロックはただの音楽フェスティヴァルではない。その後の価値観、そして人生をもまったく変えてしまうような可能性に満ちた場であることをあらためて感じた次第だ。

[写真:全1枚]

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