その場にいる人がみんな空に釘付けになる機会ってどれぐらいあるだろう?
空に美しい虹が架かった時か、はたまた未確認飛行物体が飛行しているときか。
そんな機会、そうそうない。
でもこの時、この空間にいた人はみんなが空を、見上げた。
CABARET FIESTAの横に打ち立てられた2本の鉄柱、それを渡すは一本の綱。そう、これは綱渡りの舞台だ。
綱渡りに挑戦するは MARTINEZ BROTHERS’ の2人。2本の鉄柱に向かって、2人がそれぞれ両端から綱を上っていく。そしてそれはほんの序の口。鉄柱に登り終えた2人が繰り出すのは綱の上でフェンシング、自転車で走行、クライマックスにはバランス棒を持って綱上を歩く相棒の肩に、もう1人が乗るというなど荒技の数々。演技が終わると、今まで空を見上げ、感嘆の声を出すしかなかった観客からはふと気づく「ああ、これが拍手が必要な瞬間なんだ」と。
誰もがこの空中の兄弟に惜しみない拍手を贈った、そんなひとときだった。
文・写真:近澤幸司